OMOとは?国内・海外での事例や成功のポイントを解説

2021/06/01

OMOとは?国内・海外での事例や成功のポイントを解説
この記事の目次
OMO(Online Merges with Offline)

OMOとは「Online Merges with Offline」の略語で、「オフラインとオンラインの融合」を意味します。つまり、人やモノ、空間といったオフラインの対象をオンラインに結びつける考え方や、あるいはビジネス上の戦略を指す用語がOMOです。

「OMO」という用語は、元GoogleチャイナのCEOで、ベンチャーキャピタルのシノベーション・ベンチャーズ創業者である李開復(リー・カイフー)氏が、2017年11月のエコノミスト誌『The World in 2018(2018世界はこうなる)』で初めて使用したとされています。

李開復氏は、車による渋滞問題が深刻であった北京において、彼自身が出資したスマート自転車シェアリングサービス「Mobike」がわずか1年足らずで1日2,500万回も利用されるまでに成長したことを引き合いに出し、「私はこの未来的だが差し迫った世界を『OMO』(オンラインとオフラインの融合)と呼んでいる」と表現しました。

出典:Medium『Kai-Fu Lee on the merging of online and offline worlds | by Kai-Fu Lee』

OMOを実現するための要素

李開復氏は、OMOの到来を可能にするための要因として、下記の4つを挙げています。

  1. スマートフォンの急速な普及
  2. 摩擦のないスムーズな決済システム
  3. より安価で優れたセンサー
  4. AI(人工知能)の進歩

実際、中国ではキャッシュレス決済比率が70%を超え(2017年時点)、2020年時点でスマートフォンなどの携帯端末によるインターネット利用者は9億3,200万人と全体の99.2%を占めています。また「中国製造2025」という指針のもと、政府がAI・IoT(モノのインターネット化)分野への投資を積極的に後押しすることでますますデジタルインフラの普及が進むなど、OMOを実現する要素が揃っているといえるのです。

日本でも、スマートフォンの保有率は2017年時点で60.9%でしたが2019年は67.6%と拡大しています。また、2019年のキャッシュレス決済比率は26.8%と、前年度から2.7%上昇していたことから、今後日本でもOMOが広まっていく可能性があります。

出典:
総務省『令和2年 情報通信白書』
経済産業省 商務・サービスグループ キャッシュレス推進室『第一回の議論の振り返り、 日本のキャッシュレス決済比率、 決済事業者及び国の開示の在り方について』
一般社団法人キャッシュレス推進協議会『キャッシュレス・ロードマップ 2020』
独立行政法人日本貿易振興機構『2020年上半期のインターネット普及率は67%(中国) | ビジネス短信』
経済産業省『平成29年度製造基盤技術実態等調査(中国製造業の実態を踏まえた我が国製造業の産業競争力調査)』

OMOとオムニチャネルの違い

オムニチャネル

OMOは、李開復氏が「未来的だが差し迫った世界」と表現したように、「オフラインとオンラインが融合した社会・経済」を広く意味する用語です。

一方、オムニチャネルは、実店舗や販促イベント、ECサイト、アプリなど顧客と接する複数のチャネルを連携させてそれぞれの垣根をなくすことで、収益および顧客満足度の向上を目指すマーケティング戦略を指します。

オムニチャネルは提供者である企業側目線のマーケティング戦略であるのに対し、OMOはオンラインとオフラインの境界を取り払い、テクノロジーによって顧客や周辺環境の状況までを細かく捕捉することで顧客体験を向上させるという、顧客視点でのマーケティング概念といえます。

OMOとO2O(Online to Offline)の違い

O2O(Online to Offline)

O2O(Online to Offline)は、オムニチャネル施策の1つです。インターネットを利用した販促によって実店舗などのオフラインチャネルに送客する施策や、オンラインとオフライン双方の行き来を促進させる施策を指します。例えば、メールマガジンやアプリのプッシュ通知でクーポンを配信して顧客を実店舗に誘導する施策などが挙げられます。

OMOがオンラインとオフラインの融合を指すのに対し、O2Oではオンラインとオフラインそれぞれの顧客体験は切り分けて考えられています。

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中国において普及が進んでいるOMOですが、日本国内でもOMOに取り組んでいる事例があります。ここではサントリーの企業事例を紹介します。

サントリー:TOUCH-AND-GO COFFEE

サントリー:TOUCH-AND-GO COFFEE

サントリーが運営する東京日本橋のコーヒーショップ「TOUCH-AND-GO COFFEE」では、LINEのトーク機能を使って自分好みにカスタマイズしたコーヒーを事前注文・決済し、店舗(ロッカー)で受け取ることができるサービスを提供しています。

コーヒーは、同社ブランドのBOSSをベースに、コーヒーの味やミルクの種類、甘さなどを選べるだけでなく、オリジナルのラベルを作れることが話題となりました。

モバイルオーダー&事前決済という利便性の高さに加えて、思わずSNSでシェアしたくなる仕掛けを施すことでオンラインとオフラインを上手く融合させた顧客体験を提供しています。

海外では、先述した中国やアメリカなどのIT先進国においてOMOに取り組んでいる事例が豊富です。ここでは中国とアメリカのケースをそれぞれ2つずつ紹介します。

Alibaba:フーマーフレッシュ(中国)

Alibaba:フーマーフレッシュ(中国)

中国最大のECサイトを持つアリババ集団が運営するスーパーマーケット「フーマーフレッシュ(盒馬鮮生)」は、大きな生け簀(いけす)やフードコートを有する倉庫のような実店舗を構えており、積極的にオンラインの仕組みを活用しています。

例えば、顧客が商品に付いているQRコードをスキャンすればアリペイでオンライン決済でき、その場で配送指定も可能です。オンラインで注文した場合、店舗から3km以内の距離であれば30分以内に無料で配送できます。

利便性の高いサービスで高い顧客満足度を実現しつつ、アリペイでの決済で得られる購買情報をもとに最適な在庫調整を行うことで経営効率化を図る仕組みです。

平安保険:グッドドクター(中国)

グッドドクター(平安好医生)とは、平安保険グループが運営する総合健康プラットフォームです。アプリを介して24時間AIドクターに健康相談ができ、チャット・動画を用いて医師の診断を受けられます。診察が必要になった場合にはアプリから医療機関に診療の予約を行うことも可能です。診察後にはオンライン診断書が手元へ届き、処方箋の発行もできます。

さらに、健康増進のためのウォーキングでポイントを貯めて、それを健康食品や医薬品の購入に使うことも可能です。こうしたサービスを利用した顧客のデータをもとに、さらに最適な保険商品を提供することで顧客の囲い込みを図っています。

出典:
Ping An Good Doctor『Business Introduction』
Ping An Good Doctor『 Ping An Good Doctor』

Shopkick(アメリカ)

Shopkick(アメリカ)

Shopkickとは、米国で普及しているショッピングアプリで、実店舗とオンライン双方での来店や購入で貯めたポイントを、Amazonやウォルマート、スターバックスなどで使えるギフト券に換えることができるサービスです。

顧客がShopkickを用いれば、ゲーム感覚で貯めたポイントで買い物を楽しめます。一方、企業は販促効果があるのに加えて、自社以外の店舗での顧客の購買情報を取得できるため、双方にメリットがある仕組みです。

Walmart:ピックアップタワー(アメリカ)

アメリカの小売大手ウォルマートが提供するピックアップタワーとは、顧客がオンラインで注文した商品を、ウォルマートの実店舗でスムーズに受け取れるサービスです。顧客はオンライン注文した後、実店舗の操作パネルにバーコードを読み込ませることで、巨大な商品保管装置「ピックアップタワー」から注文した商品をスピーディーに受け取ることができます。

宅配待ちのストレスだけでなく、アメリカ国内で利用が多い「置き配」における盗難リスクを回避する効果も期待されるサービスです。

出典:Walmart Inc.『Hundreds More High-Tech Pickup Towers are Headed Your Way』

OMOに取り組むには、綿密なサービス設計や、物理的なセンサーの設置や情報を一元管理するためのシステム構築といった大掛かりな準備が必要です。ここでは、そのようなOMOを成功させるために必要な3つのポイントを解説します。

徹底した顧客目線でのサービス設計・UX思考

モノ消費からコト消費へとシフトする現代においては、良い商品を販売することはもちろん、顧客に良質な体験を提供することが重要です。

先にOMOの好事例として、「思わず利用したくなる」、「知り合いにシェアしたくなる」ようなサントリーのTOUCH-AND-GO COFFEE、実店舗でのエンターテインメント性と買い物のライブ感を演出しているフーマーフレッシュ、ユーザーや医療機関とのWin-Winな関係を構築している平安保険のグッドドクターなどを紹介しました。こういった店舗やサービスには、高い利便性はもちろん、これまでにない新たな購買体験を生み出すためのさまざまな仕掛けが施されています。

OMOで成功するには、顧客視点を貫き、サービスの魅力やUX(ユーザー体験)を突き詰めることが不可欠です。

データの統合

市場が成熟してニーズが多様化する中では、パーソナライズ(各個人に合わせてサービスを提供すること)を重視した「個客」という考え方が求められます。オンライン・オフライン問わず1人ひとりの顧客に最適な体験を提供するためには、全てのチャネルにおけるデータを統合し、管理・分析しなければなりません。

データを一元管理すれば複数のチャネルごとに利用しているシステムも1つにまとめることができるため、システム利用料や管理コスト、オペレーションの手間を最小限にできるというメリットも期待できます。

最適な決済システム

OMOという概念を提唱した李開復氏は「摩擦のない決済システム」が必要だと主張しました。具体的には、顧客がストレスを感じない購買体験を提供することや、円滑なデータ収集・分析によってロイヤルカスタマーを生み出す適切なマーケティング施策を実施することなどを指します。こういった施策を実現するためには、最適な決済システムの導入が欠かせません。

例えば、ECサイトでクレジットカード登録をしているにもかかわらず、実店舗ではその都度クレジットカードを提示して決済しなければならなかったり、顧客がポイント獲得のために決済の度にスマートフォンアプリで会員証を提示したりする仕組みは不便です。提供したい顧客体験や顧客ニーズに合わせて、どのチャネルでもスムーズに決済ができるよう、クレジットカードをはじめとするキャッシュレス決済に対応しておく必要があります。

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DGフィナンシャルテクノロジー(DGFT、旧ベリトランス)は、クレジットカード決済やLINE Pay、PayPayをはじめとするID決済、さらにコンビニ決済など顧客1人ひとりに適した幅広い支払い方法に対応できる決済サービスをご用意。さらにOMOを意識した事業展開に最適なサービスとして、複数チャネルの顧客情報と決済情報を紐づけて一元管理できる「オムニPAY」を提供しています。

オムニPAYは、既存のシステムにおける顧客情報とチャネルごとの決済情報を紐づけ一元管理することで、ECサイトや実店舗間で垣根のない決済を可能にする決済サービスです。

例えば、店頭での修理サービスで、受付時に修理内容が確定しない場合にも利用できます。決済の流れとしては、まず顧客が店頭で修理を依頼して預り金金額で決済を行う際、オムニPAYによって清算したカードと管理用のIDを紐づけます。修理後に配送して顧客が現品をチェックした後に、紐づけておいたIDによって確定金額の最終決済を行うというものです。

顧客は決済のために再来店する必要がないため、顧客満足度の向上につながります。このように、店舗、オンライン双方で決済が発生する場合にも利用可能です。

このように、オムニPAYを活用することでチャネルの壁を意識せずシームレス(切れ目のない)な購買体験を提供できるため、顧客の利便性アップと満足度向上が見込めるでしょう。

また、デジタルガレージグループとして、OMO視点に立ったマーケティングの戦略立案や実行まで総合的に支援することも可能です。ぜひお気軽にご相談ください。

      
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