BtoB ECは今後どうなる?課題や成功事例を解説

2021/01/07

BtoB ECは今後どうなる?課題や成功事例を解説
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経済産業省「電子商取引に関する市場調査」によると、2019年のBtoB ECの市場規模は、352兆9,620億円で前年比2.5%の増加でした。EC化率*は、前年から1.5ポイント増の31.7%となっており、BtoC ECの物販系分野のEC化率(6.76%)より高い割合です。BtoB EC市場は市場規模、EC化率ともにBtoC ECより大きく、成長傾向にあるといえるでしょう。
*全業種から「その他」(小売、その他サービス業)を除いたEC化率

■BtoB EC市場規模の推移

BtoB EC市場規模の推移

出典:経済産業省『令和元年度 電子商取引に関する市場調査』

ところで、この調査データでは「EC」と「EDI」の区分けがされていません。EDIとは「Electronic Data Interchange」(電子的データ交換)の略で、企業が受発注や納品を行う際、BtoB特有の煩雑な取引を効率的に行うことを目的として、紙の帳票や請求書などを発行せず、専用回線やインターネットを通じて標準的な書式に統一されたビジネス文書の電子データをやりとりする仕組みを指します。

電子データを活用した取引であるEDIも、広義のECとしてBtoB ECの統計に含まれているのです。

BtoB取引では、既存取引先との間で受注・発注、請求・支払、納品・出荷といった作業が継続的に発生します。それらの手続きを紙や電話を通じて進めるのはお互いに大きな負担がかかります。また、手作業では伝票の打ち間違いなどが生じる恐れもあります。そのため、EDIの利用は人為的ミスを抑止し、コスト削減に繋がるというメリットがありました。

近年、EDIからECサイトへ移行する企業も

しかし、EDIは取引先や業界ごとにデータ形式や仕様の違うシステムを使う必要があり、効率の悪さが課題となっていました。

EDIの多くは企業間の専用回線として古い「ISDN回線」を使っていますが、ISDN回線は2024年でサービスが終了になるため、回線を変更する必要があります。インターネットを通信手段とするインターネットEDIに切り替えている業種や企業も多いものの、これを機にEDIからECサイトへの移行を検討する企業も出てきているようです。

BtoBでは、取引先や取引量によって価格や掛け率、販売する商品、決済方法が異なるなど、BtoCとは違う特有の商習慣があります。このようなBtoB EC取引においてスムーズな運用を実現するためには、一般的なECサイトとは異なる仕組みが必要です。

価格や掛け率、販路の管理

BtoCでは商品ごとの価格は基本的に一律ですが、BtoBでは取引先や取引量によって価格設定を分けたり、個別に掛け率を設定したりする機能が必要です。最低ロット(注文数)や最低注文金額を設定するケースもあります。

また、BtoCとは違い、全ての顧客に対して同じように商品を販売しているわけではなく、特定の顧客にしか販売できない商品もあるため、場合によっては顧客ごとに表示する商品を分ける仕組みも必要です。

決済方法の管理・与信取引

BtoBでは与信取引が一般的で、決済システムも掛け売りに対応する必要があります。一方、取引実績の少ない顧客は銀行振込や代引きのみで取引するというケースもあるため、顧客ごとに異なる決済方法を設定する仕組みも欠かせません。

上長による発注承認

BtoBでは発注担当者が入力すれば注文が完了するのではなく、複数の決裁者から承認を得てはじめて確定するのが一般的です。承認フローの管理機能があると、ユーザーと事業者双方にとって利便性が高くなり、取引がスムーズに進みます。

BtoB EC市場が拡大傾向にある中、BtoB取引向けにECを導入することは有効な選択肢です。ここでは、BtoB ECを導入するメリットについて、EDIとも比較しながら解説します。

まだEDIを導入していない場合→業務効率化

EDIを導入していない場合は、BtoB ECを導入することで業務効率化につながります。

BtoBの卸販売では、商品の問い合わせ対応や受発注業務を電話、メール、FAXで行うのが一般的です。しかし、この方法の場合、取引量によっては多数の人員を配置する必要があり、人為的ミスが多発するリスクがあります。

一方、BtoB ECサイトを構築することで、業務を大幅に効率化し、かつ人為的ミスの軽減が可能です。顧客ごとの販売商品の出し分けや価格・掛け率の設定、決済方法の選択なども従来より手軽かつ正確に管理できるため、従来、紙媒体で配布していたカタログの代わりにBtoB ECサイトを介してやりとりすれば、取引先に対してスムーズな提案が可能です。

また、業務効率化によって、これまで問い合わせや受発注業務に費やしていた手間や労力を他の業務に充てることもできます。より付加価値の高い業務に多くの時間を費やすことで、生産性の向上を目指すこともできるでしょう。

EDIからの移行→マーケティングを最適化して利益率アップ

EDIを導入済みの場合であっても、ECに移行することでマーケティングの精度を高める効果が期待できます。

EDIを活用すれば既存の顧客との取引を効率的に進められるようになりますが、新たな商品の提案や新規顧客の獲得などを目的とした機能を実装することは難しいでしょう。

一方、ECサイトであれば蓄積されたデータを活用しつつ、インターネットを使って広範なマーケティングができるため、新規顧客を獲得しやすくなります。ECサイトは誰でも簡単にアクセスできるため、サイト自体がプロモーションの材料になり、情報発信の場になることも強みです。

ECサイトでは顧客が求めている商品を簡単に検索できる上、これまでの取引履歴から関連性の高い商品をレコメンドできるため、売上アップも見込めます。また、メルマガやクーポンといった既存顧客への販促活動も効率的になる点が魅力です。

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ECには大きく分けて3つの種類があり、導入を検討する際はそれぞれの特徴を知っておくことが大切です。

ASP型

ASPとは、アプリケーションをサービスとして提供する仕組みです。最近では、BtoB向けのASPも出てきています。
低コストで手軽に導入できるというメリットがある一方、自社の事業や既存のシステムに合わせてカスタマイズしにくい点がデメリットです。機能や性能に不満を感じるという場合は、ASPではなくクラウド型を検討するのがおすすめといえます。

クラウド型

クラウド型は、自社内でシステムを構築せずに、必要な機能だけを契約して利用するタイプを指します。ASPよりも価格は高めですが、カスタマイズ性が高いサービスが多い点が特徴です。
サービス自体が随時アップデートされ、常に最新の状態で使えるので、長期的な費用対効果は高くなります。また、機能が足りなければ適宜追加するなど、自社の状況に合わせて無駄なく使えるのが魅力です。

パッケージ型

基本的な機能が盛り込まれたパッケージをカスタマイズし、自社で用意したインフラ上で稼働させる方法もあります。自社で運用するため、自由度が高いのが一番の特徴です。価格はクラウド型と同等ですが、時間が経つとシステム自体が古くなり、メンテナンスコストが発生するというデメリットがあります。

BtoB ECは、業務効率化やきめ細かいマーケティングが可能になるといったメリットがある一方、費用や構築プロセスで一定のハードルがあります。

BtoB ECは、基本的に特定の企業との取引が多く、独自の業務フローや商慣習が存在することもあり、個人向けECサイトとは仕様が大きく異なるのが特徴です。また、ECサイトの構築費用が数千万円から数億円になることもあり、構築する際は金額的にも労力的にも大きな負担となるケースも珍しくありません。

そのため、ECサイトをゼロから構築する際は、ECサイトを利用する取引先ごとに取引形態が大きく異なることを考慮した上で、要件定義の段階で業務フローをしっかり把握することが大切です。

ただし、ECサイトの企画からリリースまでに1年以上かかる場合もあり、初めに要件定義した内容がその後実情にそぐわなくなることもあり、開発期間が長くなる際は注意が必要です。

ECを導入する際は、実際の成功事例を知っておくことが役立ちます。ここでは2社の事例を紹介しましょう。

モノタロウ

モノタロウとは、BtoBで約1,800万点以上の商品を扱う工業用間接資材通販サイトです。約32万点ものプライベートブランド商品を取り扱うことで商品価格を抑えており、「工場のAmazon」と呼ばれています。

顧客やロット数によって価格が異なり、業者に問い合わせてカタログから注文するのが一般的だった業界において、同社はECサイトをいち早く取り入れて流通を効率化させました。
銀行振込、定期振込、口座振替など、BtoBでの商取引で多く利用される決済手段に加え、クレジットカード決済なども利用可能で、多彩な決済方法に対応しています。

モノタロウ

Super Delivery(スーパーデリバリー)

スーパーデリバリーとは、アパレル、雑貨、食品、家電、家具など、あらゆる分野の商品が手に入るマーケットプレイス型のBtoB ECサイトです。商品数は130万点以上、出展企業数は1,800社にも上ります。

特筆すべきは、一般的なECサイトと同じような使い勝手の良いデザインです。また、クラウド型の受発注システムや、メーカーと工場のマッチングサービス、海外販路開拓支援といったビジネスサポートも提供しています。

Super Delivery(スーパーデリバリー)

ECを成功させるには、取引先への説明と、セキュリティの確保が重要です。

取引先に十分な説明をする

導入する際は、あらかじめ取引先に十分な説明をしましょう。十分な周知をせず理解が得られないままBtoB ECを提供し始めると、既存の取引形態に慣れた取引先は困惑してしまいます。BtoB ECを導入する目的や意義、顧客にとってのメリットを説明し、しっかり理解を深めてもらうことが大切です。

高度なセキュリティを確保する

また、セキュリティも重要です。ECサイトはデータを蓄積できる点がメリットですが、重要な顧客情報を扱うため、高度なセキュリティを確保する必要があります。

近年ではインターネットやECが普及するにつれ、ECサイトに対するサイバー攻撃や情報漏洩によるトラブルが目立ってきています。このような問題が起こると、ユーザーに対する損害賠償責任の発生などで多大な損失を被るだけでなく、企業としての社会的信用も失墜してしまうかもしれません。

パッケージソフトなどを選定する際は、脆弱性がないか、セキュリティ対策を重視しているか、といった点もチェックするとよいでしょう。

BtoBの商取引も電子化が広がりつつあります。中でも近年注目を集めるBtoB ECサイトは、電話、メール、FAXを利用した受発注業務と比べて、業務効率化と人為的ミスの削減ができるといった点がメリットです。

BtoB ECサイトを構築する際は、企業間の特有の商慣習や業務フローに対応するための要件を洗い出し、過不足なく盛り込む必要があります。

DGフィナンシャルテクノロジー(DGFT、旧ベリトランス)は、BtoB ECサイトで頻繁に利用される銀行決済をはじめ、クレジットカード決済やコンビニ決済など幅広い決済手段を取り揃えています。

また、カード情報の保護を目的に定められた、クレジットカード業界の情報セキュリティ基準「PCI DSS」や情報セキュリティマネジメントシステム認証「ISO/IEC27001」など各種セキュリティ資格を取得している他、金融機関に求められる高度なセキュリティ環境を構築し、安心して決済できる環境を整えています。

BtoB ECサイトに決済システムを導入した事例を紹介することも可能なため、ご興味をお持ちの方は、ぜひお問い合わせください。

      
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