2020/10/29
タッチ決済とは、レジにあるリーダーにタッチ決済(非接触決済)対応のクレジットカードやデビットカードをタッチするだけで決済できる仕組みです。
クレジットカードでのタッチ決済は、正確には「EMV contactless」といいます。ブランドごとに名称は異なりますが、Visaは「Visaのタッチ決済」、JCBは「JCB Contactless」、Mastercardは「Mastercard®コンタクトレス」、AMEXは「American Express Contactless」として展開しています。
日本クレジットカード協会(JCCA)の「2019年度 ICクレジットカードに関する消費者意識調査」によると、2019年7月時点でクレジットカードのタッチ決済の認知率は35%でした。一方、全体の70%がタッチ決済に魅力を感じているということも分かっています。
この記事の目次
SuicaやEdyなどの電子マネー決済とは通信規格が異なる
日本で非接触決済といえば、SuicaやEdy、nanacoなどの電子マネーがおなじみですが、これは、クレジットカードのタッチ決済で使われているものとは規格が異なります。
日本の電子マネーで採用されているのは、ソニーが開発した日本独自の「Felica(フェリカ)」という通信規格です。Felicaは、最大通信速度が847kbps、処理がわずか0.1秒で終了するという特徴があり、スピーディな処理が求められる公共交通機関の乗車券として利用が拡大してきました。しかし、導入コストが比較的高いこともあり、現状は日本とアジアの一部でしか利用されていません。
一方、クレジットカードのタッチ決済に使われている規格は「Type A/B」という「Felica」とは異なる規格です。コストが安く世界で広く普及しており、今後日本国内でも普及が進むと考えられています。
どちらの規格も、搭載されている機器同士を近づけるだけで通信できる「NFC(Near Field Communication:近距離無線通信規格)」が採用されている非接触IC決済であるという点は共通しています。しかし、これまでは規格が異なるため、決済で使用する端末も違いました。
タッチ決済は急速に普及が進んでいる
国内外で、クレジットカードやスマートフォン、スマートウォッチを始めとしたウェアラブル端末などによるタッチ決済(非接触決済)が増加しています。
Visaブランドにおいて、全世界の取引のうち3件に1件がタッチ決済です。特に、オーストラリアでは95%、シンガポールでは88%がタッチ決済となっています。アメリカでは金融機関トップ10社のうち8社がタッチ決済対応カードを発行しており、2020年末までに3億枚のタッチ決済対応カードが発行される見込みです。
2019年12月31日時点で、国内外でタッチ決済に対応している端末の数とタッチ決済に対応しているカードの発行枚数の伸びはどちらも前年比380%で、タッチ決済の取引件数の伸びは同580%でした。国内で発行されたカードのうち、約1,900万枚がすでにタッチ決済に対応している状況です。
タッチ決済は、日本のキャッシュレス決済で圧倒的なシェアを誇るクレジットカードの利便性を高めるだけでなく、インバウンド消費の取込みという面でも今後の拡大が期待されています。
出典:
一般社団法人キャッシュレス推進協議会『キャッシュレス・ロードマップ 2020』
Visa Inc.『日本におけるキャッシュレス化の加速』
国内大手コンビニやスーパー、飲食チェーンでもタッチ決済対応がスタートしている
国内の大手流通企業においてもタッチ決済への対応が始まっています。
セブンイレブンは2020年6月11日から全店舗でカードのNFC非接触決済に対応。イオングループは、2020年3月にイオン、まいばすけっと、ダイエーなどグループ各社で約10万台のレジにVisaのタッチ決済を導入済みです。
ドトールやマクドナルドでも、NFCによるタッチ決済サービスがすでにスタートしています。
出典:
株式会社セブン‐イレブン・ジャパン『5社クレジットカードにおける非接触決済を導入』
イオン株式会社、ビザ・ワールドワイド・ジャパン株式会社『イオングループ、Visa のタッチ決済を導入』
株式会社ドトールコーヒー『クレジットカード|サービス』
日本マクドナルド株式会社『~非接触決済サービス対応でもっと便利に!~NFC による決済サービスを新たに導入』
タッチ決済のメリット
決済がスピーディでオペレーションが楽
タッチ決済は、SuicaやEdyのように、端末にカードをかざすだけで決済が完了します。カードを受け渡して端末を操作する必要がないため、事業者も顧客も手間がかかりません。Visaによると、決済にかかる処理時間は現金の半分の時間で済むというデータがあります。
なお、暗証番号も基本的に不要ですが、カード会社によっては一定金額以上の決済では必要になる場合もあります。
セキュリティ性が高い
タッチ決済には世界基準のセキュリティ技術であるEMVが採用されており、高度な安全性を実現しています。非接触IC決済なので、磁気カードの情報を盗み取るスキミングの被害リスクも低く、安全に利用することが可能です。
また、店員にカードを受け渡す必要がないため、カード番号やセキュリティコードを盗用されるといった不正リスクも防止できます。
接触を減らすことで感染防止につながる
新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される現状においては、カードの受け渡しがなく、顧客が端末にタッチするだけで決済が完了できるのは大きなメリットです。
一方、すべての顧客がタッチ決済対応カードを持っているわけではありません。そのため、磁気ストライプ、接触IC、非接触IC決済のいずれかを選んで決済ができる、いわゆる「3面待ち」に対応した端末を採用する加盟店もあります。
特に感染症対策として注目されるのが、店員がカードを受け取るのではなく、利用者側に設置されている決済端末を利用者が直接操作して決済する方式です。欧米では一般的なスタイルで、日本でも普及してきています。
スマートフォンやウェアラブル端末でも利用できる
Apple PayやGoogle Payにクレジットカードを登録することで、スマートフォンやスマートウォッチなどでもタッチ決済が可能です。Apple PayではAmerican Express、JCB、Mastercardのコンタクトレス決済が使えます。Google PayではVisaのタッチ決済のみ利用可能です。なお、Visaのタッチ決済はGarmin Pay、Fitbit Payといったスマートウオッチ搭載の決済ソリューションでも利用できます。
タッチ決済の導入方法
クレジットカードのタッチ決済を利用するには、「Type A/B」規格のNFC決済に対応した端末を導入する必要があります。SuicaやEdyなどの電子マネーが決済できるFelica対応端末では決済できません。それぞれの規格で異なるマークが使われているため、タッチ端末を見ればどちらに対応しているのか確認できます。
最近は、磁気クレジット、接触IC、タッチ決済、電子マネーなどさまざまな支払い方法に対応した決済専用端末も各種登場しています。DGフィナンシャルテクノロジー(DGFT、旧ベリトランス)が対面取引向けに提供している決済端末「VEGA3000P-Touch」なら、コンパクトな端末1台で、磁気クレジットカード、接触IC、タッチ決済、電子マネーなどあらゆる決済に対応することが可能です。クレジットカードのタッチ決済ではMastercardコンタクトレスと、Visaのタッチ決済に対応しています。
■決済端末「VEGA3000P-Touch」
また、ANA Digital Gate株式会社はスマートフォンアプリと専用のカードリーダーを利用して、事業者のスマートフォン・タブレット端末で簡単にクレジットカード決済ができるリアル店舗向け決済「mPOS(エムポス)」を提供。クレジットカード決済、国内QRコード決済のほか、訪日外国人向けの決済メニューとして、Mastercardコンタクトレス、Visaのタッチ決済をそろえています。
■mPOSを利用した決済の流れ
DGフィナンシャルテクノロジーの決済サービスについて詳しく知りたい方はこちら
タッチ決済はこれから加速度的に普及することが予想される
キャッシュレス決済の普及に加え、昨今の新型コロナウイルスの感染拡大によって、タッチ決済(コンタクトレス決済)のニーズは急速に高まっています。
イギリスでは2020年4月1日より、1回当たりのコンタクトレス決済の上限金額が従来の30ポンド(約5,000円)から45ポンドに引き上げられるなど、各国で利用を後押しする施策が実施されています。
現状では海外を中心に利用されているタッチ決済ですが、今後は日本での利用も拡大していくのではないでしょうか。