担当者必見!災害時におけるキャッシュレス決済の利点と求められる備え

2020/05/12

担当者必見!災害時におけるキャッシュレス決済の利点と求められる備え

2019年は、消費増税とともにスタートした「キャッシュレス・消費者還元事業」によってキャッシュレス決済の普及が促進された一方で、台風による豪雨などの多くの災害でインフラがダメージを受けてキャッシュレス決済のサービスが利用停止になるケースも相次ぎ、キャッシュレス決済の脆弱性が指摘されています。

災害時は電力や通信といった主要なインフラがストップするという問題があり、現状では現金こそが災害時にも確実な決済手段であると認識されています。しかし、災害対応という点では、キャッシュレス決済にも多くのメリットがあるのです。

世界中でキャッシュレス化が進むなか、インフラ・決済サービス事業者における災害時の対策も重要課題のひとつとされ、各社さまざまな取り組みを実施しています。決済サービスを利用する事業者は、災害時にも安定的に決済を実行するために、こういった動向を理解して適切な対策を取ることが大切です。

そこで本記事では、災害時におけるキャッシュレス決済の現状と、事業者は有事の際にどのような対策をすればよいのかを紹介します。

この記事の目次

災害時には停電やネットワーク回線のトラブルなどが発生することで、キャッシュレス決済が利用できなくなるリスクが高いといえます。キャッシュレス決済の利用は日に日に拡大しており、決済手段をキャッシュレスに頼って現金を持ち歩かないために、災害時に買い物難民になってしまうという消費者が続出することが考えられます。

2018年9月に最大震度7を記録した北海道胆振東部地震では北海道全域が停電に見舞われ、多くの店舗が休業を余儀なくされる中、道内を中心に展開するコンビニチェーン「セイコーマート」は、独自の災害対策として停電時に自動車の電気を利用することをマニュアル化していたことで、通常通り営業を続けることができました。

この対応は各所で絶賛された一方で、電子マネーやクレジットカードは北海道外の店舗でも利用停止となり、災害時のキャッシュレス決済の課題が浮き彫りになりました。

災害時にキャッシュレス決済が機能不全になる背景として、決済システムを維持するための電力を賄うのが難しいという問題があります。仮にバックアップ電源があっても、POSレジや接続しているCAT端末を稼働させるには不十分なことが多く、POSレジが稼働したとしても、ネットワーク回線がダウンしていれば当然ながらキャッシュレス決済は利用できません。

ただし、省電力タイプの決済サービスであれば災害時でも対応可能です。詳しくは後述しますが、例えばスマホやタブレット端末を使うタイプは少ない電力でも動作します。

現金決済も、災害時にはさまざまな制約があります。事業者と消費者の双方が十分な現金を用意しなければならず、決済プロセスにかかる負担は決して少なくありません。

事業者側は、停電によってレジが使えないと、会計や売上の集計に余計に手間がかかり、銀行やATMが機能不全に陥っていた場合は釣銭が不足する恐れもあります。災害時には盗難をはじめとする防犯対策やセキュリティ対策の面でも負担が増すでしょう。

消費者側も、災害で避難の必要なタイミングにとっさに十分な現金を持ち出すのは難しいという問題があります。火災や水害、盗難などによって、自宅に保管していた現金が失われるリスクもあるでしょう。また、銀行窓口やATMなどで預金を下ろそうとしても混雑して長時間待たされたり、停電によって利用できなかったり…といった可能性もあります。

災害により現金が失われるリスク/現金が引き落とせないリスク

このように、災害時において現金決済に依存しすぎることも、またリスクとなりえるのです。最低限の電源や通信回線の確保できるなどの条件が揃えば、キャッシュレス決済のほうが事業者と消費者の双方にとって利便性が高いというシーンは十分に想定されます。

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災害時でも利用できるキャッシュレス決済サービスとして、今後も活用が期待されるのが携帯電話通信を介したタイプです。災害時には、あらゆる生活インフラのうち、特に携帯電話回線が比較的早く復旧することが期待されます。通信キャリア各社は東日本大震災を契機として災害対策を加速させており、2016年の熊本地震や、2018年の北海道胆振東部地震でもその成果が見られています。

北海道胆振東部地震では国内で初めてとなるブラックアウト(全域停電)が発生し、各種インフラの復旧には時間を要した一方で、NTTドコモの回線は震災発生直後でも都心部では利用できる状況で、実際に影響を受けたエリアは全域の4割にまで抑制されていました。さらに移動無線車の配備や全国からの広域支援、大ゾーン基地局の発動といった復旧対策によって5日間でほぼ全面的な復旧に至りました。

北海道内の停電と携帯電話基地局停波数との関係

このような事例から、携帯電話回線は災害時でも利用できる可能性が高いといえます。つまり、スマホを介する決済サービスであれば災害時においても有用な決済サービスとして期待できるのです。

3-1. QRコード決済(ユーザースキャン方式・MPM)

「ユーザースキャン方式(MPM:Merchant Presented Mode=店舗提示型)」のQRコード決済は、店舗側が提示したQRコードを消費者側のスマホやタブレットで読み取り、専用のアプリを経由して決済が完了します。店舗が提示するQRコードは紙にプリントされたもので問題ありません。そのため、消費者のスマホやタブレットのバッテリー残量さえあれば決済が可能です。

■ユーザースキャン方式での決済の流れ
ユーザースキャン方式での決済の流れ

消費者側のスマホやタブレットのバッテリーが無くなるのではという心配がありますが、携帯キャリア各社は、災害時に避難所や携帯ショップなどで無料充電サービスを提供する取り組みも実施しています。

ただし、この決済サービスを利用するには災害時でも当該のサービスが正常に提供されていることが前提になり、POSと連動するタイプのサービスを利用する場合は、POSが稼働していなければ使用できない点には注意が必要です。

QRコード決済導入を検討している事業者さまにおすすめしたいのが「クラウドペイ」です。クラウドペイは、複数のQRコード決済サービスが1つのQRコードだけで利用できるマルチ決済サービスです。

加盟店様は、クラウドペイと契約すれば複数の支払手段をまとめて導入できます。そのため、複数の決済サービスと契約したり、サービスごとに異なるQRコードを用意する手間を省くことが可能です。QRコード決済はシェアが分散しているため、複数サービスに対応していることは消費者にとっても大きなメリットになります。

CloudPay

3-2. スマホ・タブレット+カードリーダーによる決済

専用アプリをインストールしたスマホやタブレット端末にカードリーダーに接続することでクレジットカード決済ができるサービスも、災害時に役立つでしょう。

このタイプは、店舗側のスマホやタブレット端末のバッテリー残量があり、通信環境にも問題がなければ稼働します。そのため、停電時に大規模な自家発電システムがなくても、充電済みのモバイルバッテリーさえ備蓄しておけば、バッテリーが続く限りは決済が可能です。

主なサービスには「mPOS(エムポス)」、「STORESターミナル(旧:Coiney)」、「Square(スクエア)」などがあります。サービスによっては、クレジットカードの他にも電子マネーやQRコード決済にも対応しています。

Squareはオフライン状態でもクレジット決済が可能だという特徴があります。通信不良時にはオフラインで決済の仮置きをしておき、通信環境が復旧すると本決済を進められるという仕組みです。ただし、オフライン決済から72時間以内にオンラインで本決済しないと無効になるという仕様のため注意が必要です。

■mPOS
mPOS

■STORESターミナル(旧:Coiney)
mPOS

■Square
mPOS

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4-1. 災害時でも対応できるキャッシュレス決済の用意

現金に依存するのではなく、前項で紹介したQRコード決済、mPOS、Squareなど災害時でも最低限の条件がそろえば使えるキャッシュレス決済を用意することは、事業者側にとっても消費者側にとっても有用といえます。

先述の通り、2018年の北海道胆振東部地震では、大規模停電により店舗でキャッシュレス決済が使えなくなり、多くの買い物難民が生まれたといわれています。また、日本のキャッシュレス決済比率は2017年時点では21.3%ですが、経済産業省の「キャッシュレスビジョン2019」によると、この比率を2025年までに40%に高める目標が掲げられており、今後日常的にキャッシュレス決済を利用する人は増加することが見込まれます。

災害時には消費者にとっての利便性も考慮して、現金以外にも多様な決済手段を用意し、停電など災害時に備えて通信・電源などを整備することが重要だといえるでしょう。

4-2. 通信回線網や決済システムの強化

キャッシュレス決済には、必要な端末の稼働とインターネット接続という2つの条件を満たす必要があります。災害時は、非常用電源などで店舗側の電力を確保できても、ネットワーク回線にトラブルが発生し、インターネット接続できなくなる可能性もあります。

そこで、ネットワーク回線を多重化したり、WiFiや3G、4G/LTE回線に接続できる端末を用意したりといった対策が求められるでしょう。ただし、根本的な問題として決済サービスの提供元がダウンしては元も子もないため、信頼性の高い決済システムを導入することも重要です。

2005年以降、日本政府は大地震などの災害に対する企業の防災対策の柱として、事業継続計画(BCP)に関するガイドラインや指針を相次いで発表してきました。DGフィナンシャルテクノロジー(DGFT、旧ベリトランス)では、主要顧客層であるグローバル企業や日本の大手企業がBCP対策の強化を進めているという背景もあり、オラクル社のExadataの最新世代である「Oracle Exadata X6」の導入や、同時被災の可能性が少ない2拠点での「データセンター完全二重化」を決済業界として初めて行うなど、災害時に強い決済システムを提供するための施策を行っています。

ベリトランス(現:DGFT)のマルチ決済プラットフォームにおけるデータセンター完全二重化」を日本オラクルとTISが支援へ

4-3. バックアップ電源の確保

決済端末やネットワーク回線を動作させるには、最低限の電力確保が必要です。災害時に電力会社からの電力供給がストップする場合に備えて、自家発電システムなどの非常用電源を用意しておく必要があります。

手軽に導入できるのは、メーカーが販売している非常用発電機です。例えば、ホンダの「EU28is」という発電機は、サイズはコンパクトながら照明・パソコン・スマホ充電・複合機・レジなどの利用に必要な電力を賄うことができます。

また、参考になるのが北海道胆振東部地震での事例です。ある宿泊用リゾート施設では軽油で約20時間稼働する自家発電機や、太陽光発電設備、蓄電池を設置しており、地震発生後もフロントなどの業務や、客室への給水、冷凍貯蔵庫の稼働を継続することができたといいます。

自社内で災害時にどこまでの電力を確保すべきなのか、何日分あれば足りるのか、など具体的なシミュレーションをしながら検討すると良いでしょう。

4-4. キャッシュアウトへの対応

キャッシュアウトとは、ATMではなく実店舗のレジや券売機などから現金を引き出す仕組みです。災害への備えとして近年注目されており、各社がさまざまなサービスを提供しています。

例えば、国内の銀行などで組織する「日本電子決済推進機構」は、キャッシュアウトと支払い機能を備えた、J-Debit「キャッシュアウトサービス」を提供しています。デビットカードを提示して暗証番号を入力すれば、災害時にも現金を引き出せる仕組みです。店舗側は、情報を管理するモバイル端末とレジ側の電源を確保する必要があります。

■キャッシュアウトのイメージ
キャッシュアウトのイメージ

停電時でも自家発電システムが備わったATMがあれば、銀行のキャッシュカードやクレジットカードのキャッシング機能で現金を引き出すことは可能です。しかし、ATMのある場所までたどり着けなかったり、利用者が殺到したりするなど、必要なときに現金を確保できないことも考えられます。キャッシュアウトは、災害時におけるリスクヘッジのひとつとなりえるのです。

また八丈島では、現金対応のみの店舗が多くATMが少ないという背景もあり、2018年7月にキャッシュアウト導入の取り組みを開始しました。今後は、災害対応だけでなく、山間地や島しょ部といった地方における、平時の金融インフラとしての活用も検討されています。

停電やネットワーク回線のトラブルが発生すると、多くのキャッシュレス決済が使用不可能になるケースがある一方で、災害時には、消費者・事業者とともに手元の現金が不足するリスクも想定されます。今後キャッシュレス決済比率が高まっていく中、災害時にキャッシュレス決済が利用不可能になれば、多くの買い物難民を生み出す恐れもあります。最低限の電源と通信回線を確保できれば利用可能なキャッシュレス決済なら、消費者、事業者双方に、現金のリスクをカバーする高い利便性を提供してくれるでしょう。

事業の停滞を防ぎ、消費者にスムーズにサービスを提供するためには、災害時でも対応できるように幅広い決済手段を用意する必要があるといえます。DGフィナンシャルテクノロジー(DGFT、旧ベリトランス)では、事業継続計画(BCP)対策を強化したシステムをベースに、幅広い決済サービスを提供することが可能です。クラウドペイやmPOSなど、災害時にも使える可能性のあるキャッシュレス決済もご提供しておりますので、ぜひご相談ください。

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