2022/01/06

ライブコマースとは、リアルタイムの動画配信によってECサイトでの購入を促す手法です。配信者側は、動画配信サービスやSNSなどを通して視聴者に商品を紹介し、商品の購入ページへのリンクをライブ配信画面に設けてリンクに誘導することで購入を促します。
ライブコマースはBtoC EC業界における近年の重要なトレンドの一つで、日本でも近年盛り上がりを見せており、今後も市場規模の拡大が見込まれます。
このコラムでは、ライブコマースの現状やメリット、代表的なサービス、成功事例、成功のポイントなどを解説します。
この記事の目次
ライブコマースの市場規模
ライブコマース市場が発展している中国では、KOL(Key Opinion Leader)と呼ばれるインフルエンサーがライブコマースなどを経由して販売するECの市場規模は2018年時点で約1,000億元(約1兆6,000億円※1円=16人民元)に上ります。
ライブコマースと相性が良く、販売されることの多い商材としては、食料品、衣料品、化粧品・美容関連製品、日用品、スポーツ用品、家電などが挙げられます。

出所:Ipsos and Weiboyi, "2020 Self Media Business Value White Paper,"Dec 7, 2019 をもとに作成 n=1,000
出典:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課『令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる 国際経済調査事業 (電子商取引に関する市場調査)』
ライブコマースは日本でも拡大中
日本の場合では、15歳から49歳の男女2万人に行った利用実態把握調査によると、ライブ配信を視聴したことがある人は41%、視聴した上で商品を購入したことがある人は14%でした。ライブ配信の視聴経験は男性の方が高く、買い物をする割合も女性の約2倍に上ります。

ライブコマースサービスで買うものは、「服」が66.3%と最も多く、次いで「アクセサリー・時計」37%、「家電」30%、「書籍・雑誌・コミック」「音楽CD・DVD・ブルーレイ」となっており、ユーザー1人あたりの購入金額は、月平均6,512円でした。
※ 株式会社マクロミル調べ(https://honote.macromill.com/report/20180705/)
ライブコマースのメリット
実店舗のような双方向コミュニケーションが取れる
ライブコマースでは、単なる動画での商品紹介だけにとどまらず、視聴者からリアルタイムでコメントをもらって返答する、という実店舗での接客のようなコミュケーションを取ることが可能です。これにより、商品の魅力や使い方を詳しく伝えられるとともに、ユーザーの疑問にその場で答えることで、悩み・不安を解消して購買意欲を促進する効果が見込めます。
新しい顧客層を開拓できる
ライブコマースは、自社のサイトやSNSアカウントで社員が行う方法もありますが、影響力のあるインフルエンサーとコラボレーションすることで、これまでと違った顧客層を開拓できます。自社商品との親和性が高く、フォロワーを多く抱えるインフルエンサーのSNSアカウントでライブ配信すれば、一度の配信で多くの顧客にアプローチすることが可能です。
特に若年層など、SNSで商品ブランドの情報を検索する顧客層にとっては、ライブコマースに参加するのは実店舗に足を運ぶのに比べてハードルが低く、スムーズに集客が見込めるでしょう。
マーケティングに生かせる
ライブコマースでは商品に対する視聴者からの要望をダイレクトに抽出できるため、その後の商品開発やマーケティング戦略の参考にすることも可能です。配信者側は視聴者と直接対面するわけではないため、表情や仕草までは確認できませんが、視聴数やコメントなどのリアクションから、興味関心の強さやニーズを推し量ることができます。
また、「そのライブ配信を何人が視聴して、そこからどのくらい商品ページにアクセスしたか」「視聴者のうち何人あるいは何パーセントが購入に至ったか」などのデータを詳細に分析できるため、定量的なデータを得やすい点も特徴です。
ライブコマースで利用できるサービス
■YouTube(ユーチューブ)
YouTubeでは、動画フィードやチャットなどを利用して、視聴者とリアルタイムで交流できるライブ配信機能が用意されています。概要欄に商品購入リンクを貼ることでライブコマースにつなげることも可能です。
ライブ配信動画はアーカイブとして残すことも可能で、その後も長く販売用コンテンツとして活用する道もあります。
ライブ配信機能の利用時は、チャンネルの確認(電話番号によるアカウント認証)をした上で、YouTubeの「コミュニティ ガイドライン」と「利用規約」を遵守した配信内容にしなければなりません。
出典:Google LLC『ライブ配信を始める - パソコン - YouTube ヘルプ』
■Instagram(インスタグラム)
Instagramには「インスタライブ」というライブ配信機能が実装されています。こちらもアーカイブ可能で、ライブ動画の保存期間は30日間です。
インスタライブでは、動画配信画面の下部に「商品を見る」ボタンを設置して、動画内で紹介している商品の紹介ページ「Instagramショップ」に誘導できます(アプリでの利用時のみ)。
また、Instagramではアカウント概要欄の下部に「ショップを見る」ボタンを設置して、Instagramショップに誘導することができます。
日本ではInstagramショップにおいてチェックアウト(決済)機能は使えないため、ECサイトへのリンクを貼らなければなりません。
なお、現在Instagramショップはコマースマネージャ機能によって後述のFacebookショップと統合管理する仕様になっており、ショップを管理する際はこの機能を用います。
出典:Instagram Businessチーム『新登場: Instagramショップ』
■Facebook(フェイスブック)
Facebookには「Facebook Live」というライブ配信機能が実装されています。アメリカではFacebook LiveからFacebook内のショップ購入に直接誘導できるライブショッピング機能が本格導入されており、今後は日本での実装も期待されます。
■SHOWROOM(ショールーム)
ライブ配信サービスのSHOWROOMでは、ライブ配信中に商品購入できる「SHOPROOM」というライブショッピング機能を提供しています。
コメントで商品についてリアルタイムで質問しながら、応援している配信者のおすすめ商品を購入できるだけでなく、配信者の欲しい商品をユーザーがプレゼントできるギフト機能もあり、配信を通じてさまざまなコミュニケーションができる点が特徴です。
出典:SHOWROOM株式会社『ライブ×ショッピング SHOPROOMスタート!』
■HandsUP(ハンズアップ)
「HandsUP」はライブ配信プラットフォーム「17LIVE」が提供するライブコマースツールです。ECショップ構築機能を実装しており、クーポンなどの販促機能と併せてワンストップでライブコマースを実現できるという特徴があります。また、操作性が高いため簡単にカスタマイズが可能な点も魅力です。
ライブコマースの好事例
LOWYA(ロウヤ)
家具・インテリアのECを手掛けるLOWYA(ロウヤ)は、インスタライブで商品の魅力や具体的な使い方を紹介しています。ライブの特性を生かし、写真だけではわからない商品の質感や肌触りなどを細かく解説している他、コメントや質問も丁寧に読み上げながら対応しているのが特徴です。
ライブ配信にはInstagramを使っており、視聴者からの質問は、事前にInstagramストーリーズの質問スタンプで集める方法と、ライブ配信中に届いたコメントをピックアップして回答する方法の2種類を使っているとのことです。
ライブ配信後には、紹介した商品のまとめをフィードで投稿してショッピングタグを付けて、LOWYAのECサイトにジャンプできるようになっています。
BEAMS(ビームス)
アパレル大手BEAMSは、YouTubeの公式チャンネル「BEAMSテレビ」でライブ配信「BEAMS LIVE」を不定期に開催しています。
例えば、寒くなる季節を前に、スタッフが実際に購入したオススメのアウターを紹介する動画など、時季を捉えた企画によって視聴者のニーズに対応し話題性も創出。概要欄に動画で紹介した商品リストへのリンクを掲載するとともに、期間限定で使えるクーポンを発行することによって購買を促進しています。
ライブコマースを成功させるポイント
スムーズに購入・決済できる仕組みを導入する
ライブコマースでは、リアルタイム配信ならではの臨場感を生かし、顧客の購買意欲や熱量が高まっている状態でそのままスムーズに購入・決済を促すシステムの導入が不可欠です。ライブコマースサービス内でショップを構築できない場合は、ECサイトへの分かりやすい導線を確保することが大切といえます。
ライブ配信によって商品の魅力は伝わり、購買意欲を高めることには成功しても、購入・決済の導線がスムーズでなければ購入には至らず離脱の原因になってしまいます。
特に決済については、顧客に合った決済手段を用意するのがポイントです。オンライン決済で最も利用率の高いクレジットカード決済はもちろん、ライブコマースを良く利用する若年層を取り込むために、キャリア決済やID決済、コンビニ決済など幅広い方法に対応するのがおすすめといえます。
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予期せぬトラブルへの対策
ライブ配信では、「ネット接続が切断された」「音声が聞こえにくい」「照明が暗い」といったトラブルは成果に大きな悪影響を及ぼします。事前にテストして環境を整えるとともに、トラブルへの対応についても細かく検討しておきましょう。
また、ライブ配信中に説明の誤りや不足があった場合は待機している別のスタッフがテロップなどで補足したり、不適切なコメントが投稿されたときは非表示にしたりするといった対策も必要です。
このような二重、三重の対策を行っておくことで、配信者側・視聴者側の安心感につながり、ライブ配信をスムーズに進めることができるでしょう。
配信者との事前の打ち合わせの徹底
特に、インフルエンサーなど外部の配信者とライブコマースを行う際は、事前に流れやマニュアルなどを共有し、商品について伝えるべきことや注意点などをすり合わせておく必要があります。
商品説明は、誇大広告や不適切な説明にならないよう注意が必要です。特に化粧品や健康食品の広告については薬機法で細かいルールが定められています。ルールに抵触しないように表現に関する禁止事項をレギュレーションとして設定しておきましょう。
表現上のミスを防ぎ伝え方の精度を高めるためにも、可能であれば入念にリハーサルを行っておきたいところです。
ライブ配信後のフォローアップ
ライブ配信中の説明の不備や、対応しきれなかったコメントなどがあった場合は、後日SNSや商品説明ページなどで補足説明しておくことも大切です。
また、ライブ配信をアーカイブしてSNSで後日投稿したり、コメントで質問を募って後から回答したりすることで、顧客との長期的な関係構築につながり、継続的に集客・購入といった効果も期待できるでしょう。
ECサイトへの導線確保に加えて活用したいメールリンク型決済
メールリンク型決済とは、ユーザーにメールやSNSで案内したURLを通じて、オンラインで支払いが完了するサービスです。メールやSNS、チャット機能などで決済用のURLをユーザーに送付することで支払い方法を案内します。その後、ユーザーが決済用URLを押下すると決済代行会社の決済画面に直接遷移し、決済に必要な情報を入力することでオンライン決済が完了します。
■メールリンク型決済での支払いの流れ

メールリンク型決済では、Webサイトを構築しなくてもオンライン決済を実現できるため、スピーディーにオンライン決済を導入したい事業者にもおすすめです。
また、SNSのダイレクトメッセージやチャット機能上で決済URLの案内が可能なため、SNSを使ったライブコマースでシームレスな決済を実現できる点が魅力といえます。
DGフィナンシャルテクノロジー(DGFT、旧ベリトランス)のメールリンク型決済サービスでは、クレジットカード決済をはじめ、コンビニ決済、銀行決済、電子マネー決済など幅広いニーズに対応できる決済手段を用意しています。ライブコマースの決済でお悩みの事業者さまはぜひご検討ください。