更新日|2025/12/10
ECサイト運営は、商品企画から顧客対応まで多岐にわたる業務を含みます。オンライン市場の拡大に伴い、EC担当者には幅広いスキルと戦略的な視点が求められています。
本記事では、運営の流れや具体的な業務内容、必要なスキル、成功のポイントまでを整理して解説します。
この記事の目次
ECサイト運営業務の種類
ECサイト運営は以下のような流れで進行します。さまざまな業務がありますが、顧客の目に見える部分(フロントエンド)と、裏側で支える仕組み(バックエンド)の両面に分けられます。どちらも欠かせない役割であり、効率的な運営には両者の連携が不可欠です。
- 商品企画・販売計画
- 仕入れ・製造
- ECサイト・コンテンツ制作
- プロモーション・集客
- 商品登録
- 受注
- 在庫管理
- 決済・売上・入金管理
- 物流管理(梱包・出荷・配送)
- 顧客・問い合わせ対応(アフターサービス)
- データ分析・改善
フロントエンド業務
商品企画、仕入れ・製造、ECサイト・コンテンツ制作、プロモーション・集客など、マーケティングやマーチャンダイジング業務を指します。
主にユーザーから見える部分を担当し、集客、認知、ブランディング、CV獲得や売上アップを目指す部門です。
売上に直結するため、デザイン性と操作性(UI/UX)の両立が重要です。
バックエンド業務
商品登録、受注、在庫管理、決済・売上・入金管理、物流管理(梱包・出荷・配送)、顧客・問い合わせ対応(アフターサービス)などのシステム構築・運用や、オペレーション管理業務を指します。
主にユーザーからは見えないシステムの裏側を担当し、ECサイトの運営を正確かつ効率的に進め、顧客満足度を高める役割を担います。
ECサイト運営と実店舗運営の違い
実店舗は「接客・立地」が売上の鍵ですが、ECサイトでは「検索・UI/UX・物流」が中心となります。
| ECサイト | リアル店舗 | |
|---|---|---|
| 営業時間 | 24時間365日 | 限定的 |
| 商圏 | 全国(全世界) | 店舗の近隣 |
| 顧客対応 | メール・電話・チャットなど | 店頭での接客 |
| 購入方法 | 商品写真や説明文で決める | 商品を手に取って決める |
| 事業者のコスト | 低〜中 | 高 |
| データ取得・分析 | 可能 | 限定的 |
- 実店舗:顧客は直接商品を確認し、接客を受ける
- ECサイト:情報提供・レビューが購買判断の材料となる
また、営業時間に縛られない点や全国・海外に販売できる点が大きな違いです。
ECサイト運営の業務内容
商品企画・販売計画
トレンドや季節を考慮した上でユーザーニーズを分析し、売れる商品を企画・検討します。オンラインやオフラインを問わずユーザー行動や競合動向などの市場調査を行い、定性的・定量的な分析をもとに具体案を提示します。
販売計画では、目標とする売上を達成するために、商品の単価や販売数を決め、さらに在庫数や流通戦略を検討します。売上だけでなく目標利益も達成するにあたって、商品原価だけでなくプロモーションや人件費などの販売管理費も計算した上で具体的な販売計画を立てる工程も重要です。
仕入れ・製造
販売計画に基づいて仕入れや製造を行います。仕入れでは、品質や納期、コストなどの基準を満たすために、複数の調達先を比較検討した上で条件交渉も実施。特にECサイトでは自社倉庫を持つのか中間業者を挟むのかによって納期やコストが異なるため、在庫管理や配送も視野に入れて最適な物流体制を構築します。
また、機会損失と過剰在庫を防ぐためにリスクを織り込んだ予測を立て、複数の仕入れ先を確保しておくことも必要です。
ECサイト・コンテンツ制作
ECサイトはデザインが重要ですが、単に見た目が良いというだけでなく、ユーザーが使いやすく売上につながるUI/UXを意識した設計にすることが重要です。
UI(ユーザー・インターフェース)は、サイトデザインやコンテンツの配置など、ユーザーの目に触れる部分を指します。UIやサイト設計、内部システムなどを通して、ユーザーがそのECサイトを使うことで得られる体験がUX(ユーザー・エクスペリエンス)です。
ECサイトを制作する際は、UI/UXの最適化を意識しつつ、サイト本体のデザインを考案することが必要です。また、商品説明のための動画や集客のためのバナー、LP(ランディングページ)といったコンテンツの用意も検討します。
プロモーション・集客
ECサイトではWebマーケティングが主な集客・販促手段になります。Webマーケティングでは、
- リスティング広告
- ディスプレイ広告
- リマーケティング広告(リターゲティング広告)
- SEO対策
- アフィリエイト広告
- SNS運用
など、チャネル(顧客との接点)の種類はさまざまです。
ECサイトを運営するにあたっては、これらのマーケティング手段の長所・短所を正しく理解した上で、最適な予算・人員の配分を行う必要があります。
なお、ECサイトの運営において新規集客はもちろん重要ですが、メールマガジンやクーポンなどリピーターを獲得するための仕組み作りも欠かせません。
商品登録
ECサイトでは、扱う商品の情報を1点ずつECサイトに登録する作業が必要です。商品情報は、ユーザーが閲覧して購買するかどうか検討する材料になります。商品名や価格、発売日といった基本情報はもちろん、詳細なスペックや特徴などもしっかりと記載することでアピールする必要があります。
商品を魅力的に見せて購買を促すためには、「ささげ」が重要です。
- さ:撮影
- さ:採寸
- げ:原稿
ユーザーが実際に商品を手に取ることができないECサイトにおいてはある意味「接客ツール」とも言える重要な役割です。
受注
受注プロセスでは、現在の注文状況をお知らせするメールの送信、在庫の引き当て作業、出荷指示などを行います。スピードと正確性が求められるため、一連の作業を自動化できるシステムの導入も検討しておきたいところです。
在庫管理
ECでは、在庫の過不足が出ないよう、精度の高い予測によって適切な管理を行うことが求められます。これは先述の「販売計画」や「仕入れ・製造」といったプロセスとも大きく関係しており、各部門の密な連携が必要になる業務です。
実店舗があるなどオムニチャネル展開していて在庫を共有している場合は管理が難しくなるため、複数チャネルを1つのシステムで一元管理できる仕組みを導入するのもおすすめといえます。
決済・売上・入金管理
魅力的な商品を扱っており集客に成功している場合であっても、適切な決済手段を用意していなければ離脱要因になる可能性があります。そこで、顧客ニーズに合った決済手段を用意すると同時に、課金形態(都度課金・継続課金)やビジネスモデルに合った機能を揃える必要があります。
また、支払い方法に応じて正確に出荷指示するために必要な入金管理や、決済情報を売上に反映させるシステムも必要です。
利用するECシステムに決済機能が搭載されていない場合は、別途、決済代行会社などと契約する必要があります。
物流管理(梱包・出荷・配送)
受注処理の際に行われる出荷指示に基づいて、倉庫から商品を取り出し集めるピッキング作業と、その商品を梱包して配送業者に引き渡すまでが、出荷作業の一連の流れです。
ECビジネスの物流工程においては、ただ納期までに商品を配送するだけで満足するのではなく、丁寧な梱包やメッセージの同封など、ホスピタリティを表現することも大事と言えます。顔が見えないECサイトだからこそ、こういった顧客との接点において差別化につながる取り組みをすることがポイントです。
商品の配送はヤマト運輸や佐川急便、日本郵便などの配送業者に委託するのが一般的ですが、それぞれサービスや料金体系は異なります。比較検討した上で、商材や予算に合った業者を選定しましょう。
顧客・問い合わせ対応(アフターサービス)
クレーム対応や問い合わせ対応、レビュー投稿などを促すメール配信、リピーター獲得のためのクーポン配信など、アフターサービスの中身や質によって顧客満足度やリピート率は大きく変動します。
長期的な顧客基盤を形成する上では、アフターサービスにも注力することが欠かせません。
データ分析・改善
ECサイトへのアクセス経路や訪問時間、広告の費用対効果などは常に分析して問題点をチェックし、必要に応じて改善施策を打ちましょう。Googleアナリティクスなどで分析することもできますが、使いこなすにはある程度の慣れや勉強が必要なので、バックエンドに分析機能を備えたシステムがあると便利です。
また、顧客の購買情報や属性などの分析も、販促や新商品の開発などに役立つため重要な業務と言えます。
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ECサイトの構築方法
ECサイトにはサイト構築のための初期費用と、インフラ・システム保守・付加サービスなど運用・保守のための月額費用(ランニングコスト)がかかります。費用は、構築方法や規模によって大きく異なるため、詳しくはベンダーに確認しましょう。
ASPサービス
「初期費用、運用費用ともに抑えたい」「簡単にECサイトを構築したい」といった事業者にはクラウド上のカートサービスを利用するASPサービスでの構築がおすすめです。
ECモール
「自社サイトではないが、スピーディに開業したい」「大手ECモールが持つ集客力を利用したい」という場合は、ECモールへの出店も候補となります。楽天市場やAmazonなどが挙げられます。
ただし、同モールに出店している他社と比較されやすく、また、売上や利益にかかわらず月額費用が発生するモールもあるため注意が必要です。
オープンソース
自社に技術力のある開発担当者がおり、かつ初期費用を抑えたいという事業者は、無償で公開されているオープンソース型を利用するのも選択肢の一つになるでしょう。
パッケージ
自社のECサイトに独自性を持たす場合や、今後の事業拡大に備えてカスタマイズ性を重視したい場合などにはパッケージ型がおすすめです。
フルスクラッチ
資金力があり、大規模サイトを運営したい事業者はカスタマイズの制約がなくサイト全てを自社で構築するフルスクラッチ型が向いています。この場合、開発・保守費用も全て自社で行うことになるため、そのために人員や予算についても検討しておく必要があります。
ECサイト運営に必要な人員・スキル
商品企画・MD(マーチャンダイジング)
市場のトレンド調査を行いながら、選定したターゲットに向けた商品の開発や予算管理まで行います。企業の売上を左右する重要な役割のため、十分なスキルが必要です。
Webデザインやコンテンツ制作
サイト本体やLP制作などを行うにあたって、HTML、CSS、PHP、JavaScriptといったフロントエンド系プログラミング言語などのスキル・知識や、商品の写真撮影、画像加工、バナー制作、商品説明原稿やメールマガジンのライティング、動画制作など、マーケティングやクリエイティブ関連のスキルが求められます。
規模が大きくなるほど工数は増えるため、専門で業務を担当する人員が複数必要です。
Webマーケティング
どれだけ商品力があっても、集客できなければ売上は上がりません。Webマーケティングは専門性が高いため、知識・スキルを持った人材が必要です。
広告運用はツールを活用してある程度仕組み化すればそれほど人員は必要ありませんが、SNSやオウンドメディアを運用するためのコンテンツ作成には人手が必要になります。そこで、ノウハウを有したプロに外注するのも選択肢の一つです。
カスタマーサポート
直接対面しないECサイトだからこそ、顧客満足度を高めるためには、質の高い顧客対応・コミュニケーション能力が必要になります。
カスタマーサポートは規模が大きくなればなるほど業務量が増えるものです。自社でリソースを確保するのが難しい場合は、外部委託やチャットボットの導入といった解決法もありますが、その場合は対応の質を高く保つ工夫が必要になります。常に顧客の立場に立って対応することが求められる役割ともいえます。
ECサイト運営の課題|辛いと言われる理由
ECサイトの業務は多岐にわたります。小規模なら一人でも回せるケースもありますが、規模が大きくなればなるほど業務量は増え、人員が必要になるのが普通です。
ECサイトの運営は専門性の高い業務も数多くありますが、十分なスキルを持った人材が少なく、EC市場が成長を続ける一方で業界の人材不足が課題の一つになっています。
一方で、EC業務の代行サービスもあり、受注や出荷配送、カスタマーサポートなどを外注することで負担を軽減するという選択肢もあります。代行サービスを活用すれば、予算や人員を削減できるのはもちろん、プロのスキル・経験によって業務の質を高く維持できる点も魅力です。
EC運営を成功させるポイント
ここではEC運営を成功させるポイントを5つご紹介します。
データドリブンな意思決定
ECサイトの改善には、勘や経験だけではなく、データに基づいた判断が欠かせません。アクセス解析や売上データ、ユーザーの行動データを定期的に確認し、どの施策が効果的だったのかを検証して改善につなげます。これにより、広告費の最適化やコンバージョン率(CVR)の向上といった成果を得ることができます。
顧客体験の向上
サイトのデザインや操作性など、顧客が利用時に感じる体験を向上させることは、リピート購入の促進に直結します。特にモバイル対応の最適化や、スムーズな購入フローの実現が重要です。顧客が「また利用したい」と思える体験を提供することが、売上拡大の基盤になります。
マルチチャネル戦略
自社サイトに加えて、楽天市場やAmazonなどのECモールを併用することで、集客の幅を広げることができます。それぞれのチャネルには異なるユーザー層がいるため、複数チャネルを組み合わせることで新規顧客獲得の機会が増えます。また、SNSやリアルイベントなどオフラインの接点も取り入れることで、より多面的に顧客にアプローチできるようになります。
強固な物流・在庫体制
いかに魅力的な商品を販売しても、在庫切れや配送遅延が発生すると顧客満足度は下がってしまいます。そのため、在庫状況をリアルタイムで把握できる仕組みや、複数の配送業者との連携による柔軟な出荷体制を整備することが重要です。安定した物流体制を築くことで、顧客からの信頼を獲得し、口コミやレビューでの高評価にもつながります。
ブランドストーリーの発信
価格や機能だけでなく、ブランドの理念や商品の背景を発信することで、競合との差別化を図ることができます。たとえば、「どのような想いで商品を開発したのか」「環境や社会にどんな価値を提供しているのか」といったストーリーを伝えると、共感してファンになってくれる顧客が増えます。こうしたストーリーテリングは、長期的なブランド育成とリピーター獲得に効果的です。
自社に合ったECシステムの選び方
ECシステムを導入する際には、自社の事業規模や将来の展望、運営体制を踏まえて選定することが重要です。ここでは代表的な判断基準を整理してご紹介します。
事業規模
小規模事業者には、導入コストを抑えスピーディーに立ち上げられるASPサービスが適しています。中規模以上の企業では、パッケージやモールを活用することで多機能な運営が可能になり、大規模ECではフルスクラッチ開発も選択肢になります。
成長戦略
短期的な売上だけでなく、将来的な事業拡張を見据えて選ぶことが大切です。越境ECを考える場合は多言語・多通貨に対応できるシステム、OMO戦略を検討する企業では在庫を一元管理できる仕組みが有効です。
コスト
初期費用や月額利用料に加え、決済手数料や運用コストも比較検討が必要です。売上増加で手数料負担が大きくなるケースもあるため、収益とのバランスを踏まえた総合的なコストシミュレーションが重要です。
運用体制
社内に専任担当者がいれば、自由度の高いオープンソースやパッケージが向いています。人的リソースが限られている場合は、ASPやモール型を選び、外部ベンダーに委託する方が安定した運営につながります。
セキュリティ
ECでは顧客情報や決済データを扱うため、セキュリティ体制が非常に重要です。決済代行会社を利用することで安全な取引が可能となり、PCI DSSなど国際基準に準拠しているかどうかを確認することも欠かせません。
ECサイトで重要な決済業務は決済代行会社を利用して効率化を!
決済サービスの拡充は、ECサイトの売上アップや利便性の向上において非常に重要な要素です。
DGフィナンシャルテクノロジー(DGFT)の提供するマルチ決済サービス「VeriTrans4G」は、ECサイトで必須のクレジットカード決済や定番のコンビニ決済から、PayPay、AmazonPayといったID決済など多彩な決済手段を一括導入・一元管理することが可能です。
また、越境ECやオムニチャネル展開でも活用可能な多彩な決済方法と利便性の高い機能、PCIDSS準拠はもちろん、最高レベルのセキュリティを兼ね備えています。
さらに、『ecforce』、『ebisumart』など、国内で多数利用されているECパッケージや、導入数国内最大規模のオープンソースECパッケージ『EC-CUBE』など、各種ECパッケージに決済サービスを搭載・連携しています。
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