日本で広がる生体認証決済ー動向を解説

      

更新日|2026/02/13

日本で広がる生体認証決済ー動向を解説
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生体認証は、バイオメトリクス認証とも言われ、顔、指紋、指静脈、虹彩、声紋など、人それぞれが持つ固有の身体的・行動的特徴を用いて本人確認を行う技術の総称です。 近年注目されがちな「顔認証」は、生体認証の中の一手段にすぎず、実際の社会実装では用途や利用者に応じて、複数の方式が使い分けられています。

生体認証が注目される背景には、従来型の本人確認手法が抱える限界があります。
パスワードを覚える、カードを持ち歩く、暗証番号を入力するといった行為は、利便性と引き換えに、紛失や盗難、情報漏えいといったリスクを常に伴ってきました。

特に決済領域では、クレジットカード情報の盗用による不正利用が社会問題化しており、「情報を守る」だけでなく、そもそも本人でなければ使えない仕組みが求められています。

生体認証は、本人固有の情報であり、盗まれない・使い回せない・なりすましが極めて困難という特性を持ちます。
そのため、単独で万能なセキュリティとしてではなく、既存の決済・認証基盤を補完する本人確認レイヤーとして位置づけられ、スマートフォンのパスワードや幅広いアプリの認証方法として数多く実用化されています。

中国では、生体認証、とりわけ顔認証を用いた決済が比較的早い段階から社会に浸透してきました。その象徴的な事例が、アリババグループとテンセントによる顔認証決済の実装です。

2017年、Alipay(アリペイ)を運営する中国IT大手アリババは、深センのKFC(ケンタッキー・フライド・チキン)に世界初の顔認証セルフ販売端末を設置。翌2018年、同社は顔認証決済端末「蜻蛉(チン・ティン)=トンボ」をリリースしました。それに追随するようにWeChat Payを運営するテンセントが「青蛙(チン・ワン)=カエル」を発表しました。

また2024年には中国ネットサービス大手Tencent(テンセント)とクレジットカードの国際ブランドのVISAが提携し、「手のひらの紋様」と「手のひらの静脈」中国ネットサービス大手のテンセントは、クレジットカードの国際ブランド「VISA」と提携し、手のひら認証技術を用いた決済サービスをシンガポールで開始しています。

中国における生体認証決済の普及は、巨大プラットフォーム事業者による強力なエコシステム、政府によるデジタル化・ID活用の後押し、そしてデータ活用を前提とした社会設計が組み合わさることで、生体認証が利便性と管理の両面から社会に組み込まれてきたという特徴があります。

このため、中国では顔認証をはじめとする生体認証が、決済や本人確認の中核的な手段として定着しつつあります。一方で、その広がり方は、日本や欧米とは大きく異なる社会的・制度的背景に支えられている点も見逃せません。

出典:payment navi『手のひら認識技術導入で戦略的提携、シンガポールのカフェでパイロット(テンセント/Visa)』2024.11.7

日本では、生体認証がクレジットカードやQRコード決済を一気に置き換える形で普及しているわけではありません。
すでにキャッシュレス決済の利便性が高い水準で定着していることに加え、生体情報に対する心理的な慎重さが社会全体に存在しているためです。
一方で、スマートフォンや財布を持たずに支払いができること自体に価値がある場面では、生体認証が決済を支える仕組みとして導入されています。

日立製作所×東武鉄道「SaKULaLa」における指静脈認証決済

SaKULaLa(サクララ)は、日立製作所と東武鉄道が共同展開する指静脈認証による生体認証サービスです。生体情報に安全にアクセスすることで、業種を横断して、決済、ポイント付与、本人確認などをワンストップで実現するサービスです。
認証方法は、指の内部にある静脈パターンを読み取るため、外的な影響を受けにくく、精度の高い個人識別が可能です。
SaKULaLaは、日立製作所の指静脈認証技術、東武鉄道が持つ交通・生活インフラ、そしてデジタルガレージグループの決済基盤を組み合わせることで実現しています。この中で、決済プラットフォームを担っているのがDGフィナンシャルテクノロジー(DGFT)です。
指静脈認証によって利用者を特定し、その情報をもとに、あらかじめ登録された決済手段と連携することで、カードや現金を使わずに支払いが完了する仕組みを提供しています。

詳しくはこちらをご覧ください。

「手ぶら」で広がる決済体験ー日立製作所と東武鉄道が進める「生体認証サービス」を支えるDGFTの決済ソリューションー

NEC×TRIAL(トライアル)における顔認証決済

ディスカウントストアを展開するトライアル・ホールディングスは、2024年より小型店舗などで顔認証を利用した入場管理や決済を実装しています。

本人確認ができる証明書を持参し、専用アプリをダウンロード、または「プリペイドカード」の登録後、2回目以降は財布もアプリももたず、顔認証のみで決済が可能になりました。
トライアルでは、電子棚札やカメラ、POSデータなどと組み合わせることで、在庫管理や売場改善、業務効率化を進めており、顔認証決済は、その延長線上にある施策と言えます。

出典:トライアルホールディングスニュース『トライアルグループが「顔認証システム」の開発・導入に本腰を入れる理由』2024.03.25

大阪・関西万博での顔認証決済

2025年に開催された大阪・関西万博では、会場全体がフルキャッシュレスとなり、中でも独自の決済サービス「ミャクペ!」では、NECが顔認証ソリューションを提供。 NECによると電子マネーと顔認証が紐づく決済運用の事例としては、国内最大規模になりました。

出典:公益社団法人2025年日本国際博覧会協会『国内最大級の顔認証による電子マネー決済、入場ゲートでの追加認証の導入』2024.5.23プレスリリース

NEC×和歌山県 南紀白浜地域

和歌山県の南紀白浜では、観光客の顧客満足度向上による地域活性化の取り組みの一環として、2019年から2025年まで顔認証の実証実験に取り組んでいました。こちらも、DGフィナンシャルテクノロジーがクレジットカード決済サービス及びワンクリック継続課金機能を提供していました。

観光客は、顔画像と決済に必要な情報を実証実験のサイトに事前登録することで、実証に参加している南紀白浜地域のホテル、テーマパーク、レストランといった各施設で「手ぶら」かつ「キャッシュレス」でサービスを受けることが可能です。

利用者は決済のたびに財布を取り出す必要がなく、高い利便性と安全性を実感できるでしょう。顔パスで素早く決済できるため、顧客満足度アップも期待できます。

※「IoTおもてなしサービス実証」は、2025年2月28日をもってサービス提供を終了しています。

出典:日本電気株式会社『顔認証を使って地域全体でおもてなし南紀白浜で始まった最新の地域活性化』

DGフィナンシャルテクノロジーの決済サービスについて詳しく知りたい方はこちら

生体認証決済によって、これまでと異なる顧客体験を実現することが期待されています。ここでは2つのポイントを紹介します。

手ぶらで買い物ができる圧倒的な利便性

生体認証決済では、利用する決済サービスに生体情報とクレジットカードなどの決済情報が事前に登録されていれば、店舗に設置されているカメラや機器で照合するだけで決済が完了します。

手ぶらで買い物ができる圧倒的な利便性

スマホなどの端末やクレジットカードを提示しなくてもよいので、これらを持ち歩く必要もありません。また、現金やカードの受け渡しが不要であるため、店舗従業員の負担が大幅に減ります。

セキュリティの高さもメリットです。事前登録している顔データと認証時の生体情報が一致しなければ決済できず、生体情報は固有情報であるため、なりすましも困難です。

そのため、酒類購入時など年齢確認が必要な商品の購入の際でもセルフレジで店員を呼ぶ必要がなくなり、省人化に寄与できます。
さらに基本的にパスワードの入力なども不要なため、カード情報の盗み見や流出による不正利用も防止できます。

顔認証技術は、セルフレジ端末やセンシング技術を併用すれば、店舗のさらなる省人化や無人化も可能です。

顧客満足度の向上&売上アップにつながる

生体認証技術と他の技術を組み合わせると、顧客満足度向上や売上アップも期待できます。

例えば、決済情報を顧客情報と紐づけて一元管理することで、包括的なデータマーケティングも可能になります。決済するたびに会員カードを提示しなくても、生体認証で自動的に顧客データと照合してポイントやクーポンを付与することも可能です。

VeriTrans4G クレジットカード決済 PayNowID

  複数サイトも1IDで横断利用。VeriTrans4G クレジットカード決済「PayNowID」

この仕組みを応用すれば、ECサイトなど複数チャネルでIDを統一して管理できるため、オムニチャネル施策とも好相性といえます。実店舗での購買行動を元に、ECサイトやメルマガなどで最適な商品を提案するといった施策も実現できるのです。

決済に限らず、顔認証技術の利用に関してはプライバシー侵害とセキュリティの問題が指摘されています。

導入企業は、決済のために登録された顔データをどのように利用するのかというプライバシーポリシーの策定と、慎重な運用姿勢が求められているのです。

現状では、カード情報の不正利用対策のため、顔データによる認証だけでなく、確認用コードなどを用いた二段階認証を採用しているケースがあります。

また、NECの顔認証決済サービスにおいては、登録された顔情報を数値化して本人を特定できないようにしたり、店舗端末には個人情報を保管しないようにしたりといった対策が講じられています。

出典:日本電気株式会社『顔認証決済~精度世界No.1顔認証キャッシュレス決済~』

生体認証決済は、店舗スタッフの手間やミスを減らし、圧倒的な利便性で顧客満足度の向上にもつながる仕組みです。すでに中国では普及しており、業務効率化や売上アップといった効果も実感されつつあります。

なかでも顔認証は現在、スマートフォンのロック解除、空港での出入国管理、チケットが必要なイベントでの本人確認、オフィスの入退館管理など、国内外のさまざまな場面で利用されている技術です。
生体認証には、認証精度やプライバシーへの配慮、セキュリティ設計といった課題が存在するのも事実です。特に、生体情報は変更ができないセンシティブな情報であるため、利用目的の明確化や適切なデータ管理、代替手段の確保といった点が不可欠となります。

こうした課題に対して、技術的・制度的な対応が進むことで、生体認証は日本においても用途を限定しながら、着実に活用の幅を広げていくと考えられます。

DGフィナンシャルテクノロジー(DGFT)ではパートナーと連携しながら、顔認証決済に国内最高水準のセキュリティを備えたクレジットカード決済サービスを提供し、安全・便利なキャッシュレス社会の実現を支援しています。

      
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