更新日|2026/02/27
キャッシュレス決済が広く普及する中、自治体でもキャッシュレス決済の導入が進んでいます。自治体のキャッシュレス化に伴い、業務効率化や行政サービスの向上、データ利活用や地域経済の活性化にもつなげられる可能性があります。
本コラムでは、自治体におけるキャッシュレス決済の導入・活用状況や、導入する具体的なメリット、導入する際の成功ポイント、先進事例を紹介します。
この記事の目次
自治体のキャッシュレスの現状
行政・自治体のデジタル化の伸展に伴い、キャッシュレス決済を導入する自治体が増えています。
2022年に日経グローカルが発表した「キャッシュレス決済の取り組み状況(電子地域通貨も含む)」によると、全国815市区のうち、「すでに導入済み」が70.4%、「22年度に導入」が14.2%となり、84.7%がキャッシュレス決済をすでに導入または予定があると回答しています。
官民一体でキャッシュレス決済を促進
コロナ禍で落ち込んだ消費を回復させるために、PayPayなどのキャッシュレス決済事業者が自治体と共同でキャンペーンを行う動きが広まり、一気にキャッシュレス決済が世間に定着しました。
PayPayは地域経済を活性化させる目的で、対象店舗においてQRコード決済によってPayPay残高で支払うと最大20%(上限1,000円分)が還元される「街のPayPay祭り」キャンペーンを実施するなど、自治体におけるキャッシュレス決済の活用が広がりつつあります。
自治体におけるキャッシュレスの導入シーン
自治体では、以下のようなシーンでキャッシュレス決済が導入されています。
- 窓口における手数料(住民票や各種証明書の発行手数料)
- 教育施設の利用料(幼稚園、保育園の利用料、学校給食費など)
- 公共施設の利用料(博物館、動物園、体育館、駐輪場の利用料など)
- 税・公金の収納(市区町村民税、都道府県民税、固定資産税、都市計画税、不動産取得税、水道料金など)
自治体でキャッシュレスを導入するメリット
業務効率化とサービス品質の向上
現金の授受がなくなることで、おつりの受け渡しや現金の管理コストが減り、スピーディにサービスを提供することが可能です。
また、住民にとっても支払いの選択肢が増えることで現金を準備する手間がなくなり、手続きにかかる時間や待ち時間が少なくなるといったメリットがあります。
データの利活用
キャッシュレス決済を導入することで、住民の購買行動データを収集しやすくなり、商店街など地域経済の課題発見や改善につなげる効果が期待されます。
まだ本格的な実用化には至っていませんが、2020年に総務省が決済データを活用して地域の課題解決を図るモデル事業を福島県会津若松市、埼玉県秩父地域、和歌山県田辺市の3地域で実施し、データ取得や取扱いに関するガイドライン策定に向けた検討を実施しました。
出典:総務省『令和2年度「地域における決済情報等の利活用に係る調査」成果の公表』
自治体でキャッシュレス決済を導入する際のポイント
導入する決済手段の選定
キャッシュレス決済は、クレジットカード、電子マネー、QRコード決済などさまざまな種類があり、利用シーンや年代によって利用率が異なります。
例えば、全体として最も利用率が高いクレジットカード決済は比較的高額の決済に使われる傾向があり、若年層では利用率が低くなる点が特徴です。2020年12月時点において、40歳代以降のクレジットカードの利用率は約85%だったのに対して、30歳代は82.5%、20歳代は71.4%でした。一方、PayPayなどのQRコード決済は若い人ほどよく使う傾向にあり、60歳代では36.9%台、70歳以上では18.3%の利用率に対して20歳代、30歳代では50%を上回っていました。
地域によっても決済手段別の利用率は異なるため、住民のニーズを把握した上で最適な決済手段を選定することが重要です。その地域の住民にとって馴染みのない決済手段だと、職員のオペレーションもスムーズにいかない恐れがあります。
■キャッシュレス決済の利用頻度
※上記グラフ内の数値は「あなたはキャッシュレス決済をどの程度利用していますか。」という問いに対し「全く利用していない。」と回答した回答者を除いた数値。
出典:消費者庁『キャッシュレス決済に関する意識調査結果詳細(令和2年12月)』
キャッシュレス決済の会計処理
キャッシュレス決済の導入には初期費用や決済手数料、入金手数料などが発生するほか、売上発生と入金のタイミングがズレるため、通常とは異なる会計処理が必要です。
この点については、経済産業省から運用方法が例示されています。
まず決済手数料ですが、歳入用口座には実際の売上金額ではなく決済手数料を差し引いた金額が入金されるため、決済手数料を地方自治法上の「繰替払」(施行令第164条)とみなし、自治体規定を変更して勘定システム上は通常の繰替払と同様に処理するという方法です。
次に売上と入金タイミングのズレについては、現金決済とキャッシュレス決済におけるそれぞれの決済金額、計上品目を別々に集計し、税外収入管理簿などで管理して計上する方法が示されています。
出典:経済産業省『公共施設・自治体窓口におけるキャッシュレス導入手順書(概要)』
契約する決済事業者の選定
利用者の多様なニーズに対応し、行政サービスの利便性を高めるためには、幅広い決済手段に対応するのが望ましいといえます。しかし、決済事業者と個別に契約するのは審査や契約の負担が増えるという問題があります。そこで、1つの手続きで複数の決済手段をまとめて導入できる決済代行会社を選ぶのがおすすめです。
決済事業者の選定や決済端末の調達方法は限定されていませんが、キャッシュレス決済にはシステムの機能性や信頼性が求められるため、複数の事業者の提案を比較検討できる「公募型プロポーザル方式」を採用するケースが多く見られます。この場合、導入できる決済手段や決済の対象となるサービスの詳細(料金・件数など)を、事業者が仕様書として提示し、自治体側がそれを審査するという流れとなります。
選定のポイントはケースによって異なりますが、代表的なものとしては以下の項目が挙げられます。
- システムの機能
- 維持管理体制
- 職員への研修体制
- 決済手数料
- 入金タイミング
- セキュリティ性
- 導入実績(自治体など公共サービスにシステム提供したことがあるか)
指定金融機関の関連会社にクレジットカード会社などがある場合は、当該金融機関に相談して導入を進めるケースもあります。
出典:経済産業省『公共施設・自治体窓口におけるキャッシュレス導入手順書(第2版)』
キャッシュレス化を推進している自治体の事例
群馬県富岡市
富岡市はキャッシュレス化に積極的に取り組んでいる先進事例として各種メディアでも多く取り上げられています。
窓口手数料や税・公金だけでなく、富岡製糸場や市立美術館など公共施設の利用料の支払いにもキャッシュレス決済を導入。クレジットカード、電子マネー、QRコード決済など幅広い決済手段に対応しています。
出典:富岡市『市民サービスの充実(キャッシュレス化の推進)について』
兵庫県姫路市
兵庫県姫路市では、行政手続きの利便性向上を目的にキャッシュレス決済を活用したDXを推進しています。
姫路城などの観光施設の券売機や、住民票・証明書発行手数料の支払いをキャッシュレス化。
さらに、市税や国民健康保険料などの公金納付にもスマートフォン決済アプリを導入しました。
これにより、窓口や金融機関の営業時間に依存せず、24時間いつでも納付が可能な環境を実現。
市民の利便性向上に加え、窓口業務の負担軽減や収納事務の効率化にもつながっています。
DGフィナンシャルテクノロジーの決済サービスについて詳しく知りたい方はこちら
DGフィナンシャルテクノロジーは自治体のキャッシュレス化を支援しています
DGフィナンシャルテクノロジー(DGFT)では、自治体や行政機関にも決済サービスを提供した実績が複数あります。ここでは3つの事例を紹介します。
顔認証システム実証実験
富山市や静岡市で、NECとの共同事業として、クレジットカード決済サービスと、顔認証登録で生成されるユーザIDとクレジットカード情報を紐付けて登録することで、ユーザIDのみでの決済を可能とする「ワンクリック継続課金(PayNowID)」機能を提供。
これは、事前にユーザーが登録した顔のデータとクレジットカード情報を紐づけて登録することで、エリア内の複数の店舗にて顔認証するだけでユーザーのカード情報が呼び起こされ、決済が完了する仕組みです。利用者は、店舗での購入時に、財布やスマートフォンを出す必要がなく、スピーディに支払いを完了できるようになります。
特許庁における手数料のクレジットカード納付
特許庁のインターネット出願ソフトを用いたオンラインでの出願手続きにおいて、即時に納付が完了するクレジットカード決済のシステムを提供しています。
納付者に割り振られた固定IDとクレジットカード情報を紐付けることで、2回目以降の納付ではクレジットカード情報の入力が不要となる「会員ID決済機能」や、クレジットカードの有効性確認およびカード番号や有効期限を自動更新する「洗い替え機能」なども提供しています。
国内主要6空港の関税支払いに「統一型QRコード決済『クラウドペイ』」を提供
羽田、成田、関西、中部、新千歳、福岡の6空港における、入国者の免税範囲を超えた携帯品に発生する関税などの税金のキャッシュレス納付に、『クラウドペイ』を提供。
DGフィナンシャルテクノロジーは、クレジットカード情報保護のグローバル基準「PCI DSS」に完全準拠し、金融機関に求められる高度なセキュリティ環境・管理体制を構築しています。自治体のニーズに応じた多様な決済手段の提供により、自治体でのキャッシュレス化推進を支援します。
