自治体でもキャッシュレス化進む!成功のポイントや事例を解説

2022/02/24

キャッシュレス決済が広く普及する中、自治体でもキャッシュレス決済の導入が進んでいます。自治体のキャッシュレス化に伴い、業務効率化や行政サービスの向上、データ利活用や地域経済の活性化にもつなげられる可能性があります。

本コラムでは、自治体におけるキャッシュレス決済の導入・活用状況や、導入する具体的なメリット、導入する際の成功ポイント、先進事例を紹介します。

この記事の目次

一般社団法人キャッシュレス推進協議会「キャッシュレス・ロードマップ 2021」によると、2019年の日本のキャッシュレス決済比率は支払い額ベースで26.8%でした。政府の目標として2025年6月までに40%到達、将来的には世界最高水準である80%を目指す中で、自治体においてもキャッシュレス決済の導入が推進されています。

図表1 キャッシュレス支払額と民間最終消費支出に占める比率

出典:⼀般社団法⼈キャッシュレス推進協議会『キャッシュレス・ロードマップ 2021』

政府が自治体のキャッシュレス化を後押し

経済産業省は、2020年度に自治体窓口や公共施設のキャッシュレス化に取り組む自治体として「モニター自治体」を選定しました。これは、キャッシュレス推進協議会が策定した「公共施設・自治体窓口におけるキャッシュレス決済導入手順書」に沿ってキャッシュレス決済の導入を進め、導入・利用する中で発生するノウハウや課題を集約して手順書に反映する事業の一環です。全国で29の自治体が選定され、専門家のサポートのもとでキャッシュレス決済導入に向けた活動を行っています。

2006年に地方自治法が改正され、水道料金などの公共料金や住民税に関してはクレジットカードによって支払い・納付することが認められました。一方、現状の地方自治法では、「使用料等」を自治体に支払う手段は原則現金と定められており、その他のキャッシュレス決済の利用については明記されていません。そのような中、2019年に総務省より「電子マネーを利用した公金の収納について」の通知がなされ、実際に公金支払い手続きに電子マネー決済を導入する自治体も出てきています。

官民一体でキャッシュレス決済を促進

また、コロナ禍で落ち込んだ消費を回復させるために、PayPayやLINE Payなどのキャッシュレス決済事業者が自治体と共同でキャンペーンを行う動きが広まっています。例えば東京都港区では、区内観光業の支援を目的として、キャンペーン期間中に対象施設・店舗においてLINE Payによる決済を行った利用者に決済金額の50%(上限5,000円分)のLINEポイントを還元するキャンペーンを実施しました(2021年4月25日に終了)。

他にもPayPayは地域経済を活性化させる目的で、対象店舗においてQRコード決済によってPayPay残高で支払うと最大20%(上限1,000円分)が還元される「街のPayPay祭り」キャンペーンを実施(2021年9月13日から11月28日まで)。自治体におけるキャッシュレス決済の活用が広がりつつあります。

出典:
経済産業省『キャッシュレスの現状及び意義』
総務省『電子マネーを利用した公金の収納について』
東京都港区『LINE Payによる決済で50%分のLINEポイント還元! VISIT MINATO 応援キャンペーン』
PayPay株式会社『PayPayであなたの街を応援しよう!いろんな街でキャンペーン開催!』

自治体では、以下のようなシーンでキャッシュレス決済が導入されています。

  • 窓口における手数料(住民票や各種証明書の発行手数料)
  • 教育施設の利用料(幼稚園、保育園の利用料、学校給食費など)
  • 公共施設の利用料(博物館、動物園、体育館、駐輪場の利用料など)
  • 税・公金の収納(市区町村民税、都道府県民税、固定資産税、都市計画税、不動産取得税、水道料金など)

業務効率化とサービス品質の向上

現金の授受がなくなることで、おつりの受け渡しや現金の管理コストが減り、スピーディにサービスを提供することが可能です。

また、住民にとっても支払いの選択肢が増えることで現金を準備する手間がなくなり、手続きにかかる時間や待ち時間が少なくなるといったメリットがあります。

データの利活用

キャッシュレス決済を導入することで、住民の購買行動データを収集しやすくなり、商店街など地域経済の課題発見や改善につなげる効果が期待されます。

まだ本格的な実用化には至っていませんが、2020年に総務省が決済データを活用して地域の課題解決を図るモデル事業を福島県会津若松市、埼玉県秩父地域、和歌山県田辺市の3地域で実施し、データ取得や取扱いに関するガイドライン策定に向けた検討を実施しています。

出典:総務省『令和2年度「地域における決済情報等の利活用に係る調査」成果の公表』

導入する決済手段の選定

キャッシュレス決済は、クレジットカード、電子マネー、QRコード決済などさまざまな種類があり、利用シーンや年代によって利用率が異なります。

例えば、全体として最も利用率が高いクレジットカード決済は比較的高額の決済に使われる傾向があり、若年層では利用率が低くなる点が特徴です。2020年12月時点において、40歳代以降のクレジットカードの利用率は約85%だったのに対して、30歳代は82.5%、20歳代は71.4%でした。一方、LINE PayやPayPayなどのQRコード決済は若い人ほどよく使う傾向にあり、60歳代では36.9%台、70歳以上では18.3%の利用率に対して20歳代、30歳代では50%を上回っていました。

地域によっても決済手段別の利用率は異なるため、住民のニーズを把握した上で最適な決済手段を選定することが重要です。その地域の住民にとって馴染みのない決済手段だと、職員のオペレーションもスムーズにいかない恐れがあります。

■キャッシュレス決済の利用頻度
図表2 キャッシュレス決済の利用頻度

※上記グラフ内の数値は「あなたはキャッシュレス決済をどの程度利用していますか。」という問いに対し「全く利用していない。」と回答した回答者を除いた数値。

出典:消費者庁『キャッシュレス決済に関する意識調査結果詳細(令和2年12月)』

キャッシュレス決済の会計処理

キャッシュレス決済の導入には初期費用や決済手数料、入金手数料などが発生するほか、売上発生と入金のタイミングがズレるため、通常とは異なる会計処理が必要です。

この点については、経済産業省から運用方法が例示されています。

まず決済手数料ですが、歳入用口座には実際の売上金額ではなく決済手数料を差し引いた金額が入金されるため、決済手数料を地方自治法上の「繰替払」(施行令第164条)とみなし、自治体規定を変更して勘定システム上は通常の繰替払と同様に処理するという方法です。

次に売上と入金タイミングのズレについては、現金決済とキャッシュレス決済におけるそれぞれの決済金額、計上品目を別々に集計し、税外収入管理簿などで管理して計上する方法が示されています。

出典:経済産業省『公共施設・自治体窓口におけるキャッシュレス導入手順書(概要)』

契約する決済事業者の選定

利用者の多様なニーズに対応し、行政サービスの利便性を高めるためには、幅広い決済手段に対応するのが望ましいといえます。しかし、決済事業者と個別に契約するのは審査や契約の負担が増えるという問題があります。そこで、1つの手続きで複数の決済手段をまとめて導入できる決済代行会社を選ぶのがおすすめです。

決済事業者の選定や決済端末の調達方法は限定されていませんが、キャッシュレス決済にはシステムの機能性や信頼性が求められるため、複数の事業者の提案を比較検討できる「公募型プロポーザル方式」を採用するケースが多く見られます。この場合、導入できる決済手段や決済の対象となるサービスの詳細(料金・件数など)を、事業者が仕様書として提示し、自治体側がそれを審査するという流れとなります。

選定のポイントはケースによって異なりますが、代表的なものとしては以下の項目が挙げられます。

  • システムの機能
  • 維持管理体制
  • 職員への研修体制
  • 決済手数料
  • 入金タイミング
  • セキュリティ性
  • 導入実績(自治体など公共サービスにシステム提供したことがあるか)

指定金融機関の関連会社にクレジットカード会社などがある場合は、当該金融機関に相談して導入を進めるケースもあります。

出典:経済産業省『公共施設・自治体窓口におけるキャッシュレス導入手順書(第2版)』

群馬県富岡市

■富岡市で利用できるキャッシュレス決済

富岡市はキャッシュレス化に積極的に取り組んでいる先進事例として各種メディアでも多く取り上げられています。

窓口手数料や税・公金だけでなく、富岡製糸場や市立美術館など公共施設の利用料の支払いにもキャッシュレス決済を導入。クレジットカード、電子マネー、QRコード決済など幅広い決済手段に対応しています。

出典:富岡市『市民サービスの充実(キャッシュレス化の推進)について』

福岡県福岡市

福岡市では、行政サービスのDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しており、キャッシュレス決済も積極的に導入しています。

2018年6月29日から2019年3月31日に実施したキャッシュレス決済の実証実験は、LINE Payを導入した公共施設の従業員の83%が「継続したい」と回答するなど功を奏し、2021年9月時点で約30種類の決済手段を導入し、27の窓口・51の施設で利用できるなど普及が拡大しました。

クレジットカード、電子マネー、QRコード決済など幅広い決済手段に対応しており、コロナ禍前はインバウンド需要が多かったことを受けて銀聯カードやAlipay、WeChat Payを導入しているのも特徴です。

出典:
福岡市『キャッシュレス実証実験』
LINE株式会社『公共施設のキャッシュレス導入 最終報告』
福岡市『公共施設でのキャッシュレス決済を大幅に拡大します』

なお福岡市は、2021年9月1日より、市内各施設の手数料、利用料の支払い方法としてキャッシュレス決済を拡充するにあたって、デジタルガレージグループが提供する「統一型QRコード決済『クラウドペイ』」を採用しています。クラウドペイは1つのQRコードを店頭に設置するだけで、複数のQR・バーコード決済サービスを導入することができるサービスです。

DGフィナンシャルテクノロジーの決済サービスについて詳しく知りたい方はこちら

DGフィナンシャルテクノロジー(旧:ベリトランス)では、自治体や行政機関にも決済サービスを提供した実績が複数あります。ここでは3つの事例を紹介します。

顔認証システム実証実験

富山市や静岡市で、NECとの共同事業として、クレジットカード決済サービスと、顔認証登録で生成されるユーザIDとクレジットカード情報を紐付けて登録することで、ユーザIDのみでの決済を可能とする「ワンクリック継続課金(PayNowID)」機能を提供しています。

これは、事前にユーザーが登録した顔のデータとクレジットカード情報を紐づけて登録することで、エリア内の複数の店舗にて顔認証するだけでユーザーのカード情報が呼び起こされ、決済が完了する仕組みです。利用者は、店舗での購入時に、財布やスマートフォンを出す必要がなく、スピーディに支払いを完了できるようになります。

特許庁における手数料のクレジットカード納付

特許庁のインターネット出願ソフトを用いたオンラインでの出願手続きにおいて、即時に納付が完了するクレジットカード決済のシステムを提供しています。

納付者に割り振られた固定IDとクレジットカード情報を紐付けることで、2回目以降の納付ではクレジットカード情報の入力が不要となる「会員ID決済機能」や、クレジットカードの有効性確認およびカード番号や有効期限を自動更新する「洗い替え機能」なども提供しています。

国内主要6空港の関税支払いに「統一型QRコード決済『クラウドペイ』」を提供

羽田、成田、関西、中部、新千歳、福岡の6空港における、入国者の免税範囲を超えた携帯品に発生する関税などの税金のキャッシュレス納付に、「統一型QRコード決済『クラウドペイ』」を提供しています。2021年7月19日から2022年3月31日の間、「クラウドペイ」を介してau PAY、LINE Payの2つが利用可能です。

DGフィナンシャルテクノロジーは、クレジットカード情報保護のグローバル基準「PCI DSS」に完全準拠し、金融機関に求められる高度なセキュリティ環境・管理体制を構築しています。自治体のニーズに応じた多様な決済手段の提供により、自治体でのキャッシュレス化推進を支援します。

      
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