更新日|2025/09/10

インバウンド需要を取り込むにはキャッシュレス決済の導入は不可欠といわれています。特に、中国人訪日客や越境ECで中国人利用者をターゲットにしている事業者であれば、決済手段にAlipayを加えておくメリットは大きいでしょう。
本記事ではAlipay、Alipay+の基礎知識や導入メリット等について解説します。
この記事の目次
Alipay(アリペイ)、Alipay+(アリペイプラス)とは?
Alipayの提供するサービスには、「決済サービス」と「その他サービス」の2種類がありますが、この段落では主に決済サービスとしてのAlipayの特徴の紹介と実店舗・EC事業者がAlipayを導入する必要性について解説を行います。
Alipayの特徴
中国国内でのキャッシュレス決済では「Alipay(アリペイ)」と「WeChatpay(ウィーチャットペイ)」が多く用いられています。
Alipayとは、中国の阿里巴巴集団(アリババ・グループ)が提供するキャッシュレス決済システムで、中国最大のECプラットフォームタオバオの決済手段として普及しました。WeChat Payは、中国の騰訊(テンセント)が提供するSNSであるWeChatが提供している決済サービスです。
中国は人口数が世界一であり、さらにキャッシュレス化が進んでいる国であることから、中国でのキャッシュレス決済の利用者は日本と比べて桁違いに多いです。
Alipayは世界最大級のキャッシュレス決済サービスプロバイダーといってよいでしょう。AlipayはECサイトでのオンライン決済だけでなく実店舗でも利用可能です。店舗は、端末型、タブレット型、ステッカー型、POS型の4種類から選べます。
決済サービス以外にもAlipay利用者向けに、信用スコア診断や資産運用などさまざまなサービスが提供されており、Alipayは「ライフスタイル・スーパーアプリ」を標榜しています。
Alipay+(アリペイプラス)の違い
Alipay+(アリペイプラス)は、同社が提供する、集約型ウォレットゲートウェイです。Alipay(中国)を含む複数の海外Eウォレットや銀行アプリに一括で対応が可能です。
1つの決済プラットフォームで複数の地域の決済手段を導入できるというメリットがあります。
Alipay+で提供する各サブブランドは、各国内での仕様と異なる部分がありますのでご留意ください。
※Alipay+については、以下サイトも参照ください。URLは予告なく変更となる場合があります。
Alipay+サイト
https://www.alipayplus.com/
【Alipay+で提供可能な主なEウォレットと銀行アプリ】
- Alipay(中国本土)
- AlipayHK(香港特別行政区)
- GCash(フィリピン)
- HelloMoney(フィリピン)
- TrueMoney(タイ)
- K PLUS(タイ)
- Touch 'n Go Eウォレット(マレーシア)
- MyPB by Public Bank(マレーシア)
- Kakao Pay(韓国)
- Toss Pay(韓国)
- NAVER Pay(韓国)
- MPay(マカオ)
- OCBC Digital(シンガポール)
- Changi Pay(シンガポール)
- EZ-link(シンガポール)
- Hipay(モンゴル)
- Tinaba(イタリア)
- BigPay(マレーシア、タイ、シンガポール)
- Kaspi(カザフスタン)
現在、Alipay+は66の国や地域の約1億の加盟店と接続しており、36のEウォレットおよび決済パートナーを通じて、約17億以上のユーザーにサービスを提供しています。
中国だけでなく東南アジアなどASEAN諸国の消費者へ広くアプローチが可能となるため、急増するインバウンドニーズに対応可能なAlipay+の導入は有効な手段といえます。
Alipay、Alipay+導入の必要性
日本でのAlipay、Alipay+導入の必要性について、実店舗とECの2つの側面から考察してみましょう。
まず、実店舗についてですが、訪日外国人旅行者は年々増え続けています。2024年には約36,00万人を突破しており、消費額も8.1兆円とどちらも過去最高を大幅に更新しました。政府は2030年に訪日外国人旅行者数6,000万人、消費額15兆円の目標を掲げて、今後も増加が期待されています。出典:観光庁『インバウンド消費動向調査』2025年1月度版)
なかでも、国・地域別の旅行者数比率で見ると最も多く日本を訪れたのは880万人を超えた韓国で、続いて中国、台湾となりました。
一方、消費額は約1兆7,000億円(構成比21.3%)を消費している中国がトップとなりました。(出典:日本政府観光局『訪日外客数(2024年12月および年間推計値)』『【インバウンド消費動向調査】2024年暦年の調査結果(確報)の概要』)
https://www.jnto.go.jp/news/_files/20250115_1615.pdf

出典:『【インバウンド消費動向調査】2024年暦年の調査結果(確報)の概要』
このような訪日外国人旅行者からの潜在顧客を取り込むためには、複数の海外の決済手段をバンドルした決済サービスの導入は必須といえます。中国国内でのキャッシュレス決済は約80%まで普及しており(2025年1月時点)、現金を使わない生活が中国人の間で一般的になっています。
出典:(一社)キャッシュレス推進協議会『キャッシュレスロードマップ2024』
https://paymentsjapan.or.jp/wp-content/uploads/2024/12/roadmap2024.pdf
また、中国国内でのAlipayのシェアは圧倒的なため、Alipayを導入しておくことは販売機会ロスの低下や集客力の向上につながるでしょう。したがって、AlipayやAlipay+が使える実店舗は集客力も高まり、中国人の購入頻度や金額の向上の恩恵を受けることができるでしょう。
つぎに、ECへのAlipay導入の必要性についてですが、世界中でEC利用が増加する中、海外消費者が日本のECサイトで購入する越境ECも拡大傾向にあります。特に、中国からの越境EC率は高いものがあり、日本からの購入額は2024年には2兆4,301億円に上りました。(出典:経済産業省『令和5年度電子商取引に関する市場調査の結果を取りまとめました』)
https://www.meti.go.jp/press/2024/09/20240925001/20240925001.html
この額はすでに説明した訪日中国人の消費額よりも大きいという点がポイントです。これは、中国人が訪日後さらに越境ECでも再度購入するというサイクルができていることが理由のひとつと言えるでしょう。しかしながら、越境ECで利用可能な中国人向け決済手段は限定的なため、Alipay、Alipay+を導入していれば、中国のみならず海外からの消費者の購買ニーズに対応できるといえます。

出典:経済産業省『令和5年度電子商取引に関する市場調査』より引用
Alipay(アリペイ)、Alipay+(アリペイプラス)導入のメリットは?
決済処理のスムーズ化
Alipay、Alipay+導入の最大のメリットは、決済処理が合理化されスムーズになることです。これにより、実店舗でもECサイトでも同様の効果が得られます。それぞれの特徴を考察してみましょう。
まず、実店舗の場合ですが、Alipay、Alipay+を使えばレジでの現金の計数や受け渡しが不要になり、釣り銭の受け渡しに関するミスや盗難のリスクを大きく低減させます。
また、Alipay、Alipay+の実店舗での決済は、店舗側が表示するQRコードを読み取る、または消費者が提示したQRコードを店舗の端末で読み取る方式となり、簡易的に決済処理が可能となります。
Alipay+は、Alipayを含むさまざまな国や地域のQRコード決済が利用できるため、訪日外国人観光客にとっては使いなれた決済手段で決済が可能となるため、販売機会の創出につながります。
一方で、ECの場合には消費者の手数料コストを大幅に削減可能です。例えば、商品購入代金を国際送金などで支払うと、手数料がかかる上に送金手続きや外貨両替といった手間も発生します。Alipay、Alipay+を使えば、Alipayが提供するプラットフォームの中で完結するので手続きが簡単で、さらに迅速に決済ができるのです。
また実店舗・ECサイトともに、Alipay、Alipay+による決済処理に関して、事業者は為替変動リスクがありません。
決済の際、事業者は日本円で販売を行いますが、Alipayが自国通貨に換算し利用者に自国通貨で提示します。日本のAlipay、Alipay+加盟店事業者への入金額は販売時点の日本円価格での売上げが円建てで支払われます。つまり、入金額はあらかじめ日本円で決定され、日本円で入金されるため、売り上げに影響為替変動リスクがないのです。
新規顧客の獲得など販売促進
Alipay、Alipay+導入は、訪日外国人旅行客への実店舗での販売や越境EC事業で、販売機会の増加や客単価上昇などの販売促進につながる可能性があります。
中国人旅行客の多くは海外でもモバイル決済を利用しています。なぜなら、日本円へ両替する手間も手数料も必要がなく、財布に手持ちの現金がなくても決済が可能だからです。操作性やお金の管理の面からも、日頃使い慣れた決済手段での支払いニーズは高いでしょう。
実店舗でAlipay、Alipay+に対応しておけば、Alipayが使えない店舗より購入されやすくなり、売上げアップにつながります。店舗でのAlipay決済の魅力は、スマートフォンでスピーディーに決済できる点です。
特に訪日外国人を対照とする場合、手持ちの日本円に限りがあることが多く、売り逃しが発生してしまうケースがありますが、Alipay、Alipay+が導入されていれば、欲しいと思った瞬間に購入してもらえる可能性も高くなるため、衝動買い需要まで取り込むことができるといえます。
一方で、越境ECサイトの場合は、Alipay、Alipay+などの他通貨決済に対応していれば、消費者は、為替変動リスクに悩まされることなく、自国通貨の人民元で、また慣れ親しんだ決済手段で安心して決済ができるため、販売促進が期待できます。
Alipay、Alipay+は、36のEウォレットおよび決済パートナーを通じて、17億以上のユーザーにサービスを提供しています。
そのため、日本の実店舗でも中国向け越境ECサイトの場合でも、Alipay、Alipay+を導入しておけば、決済に関する壁を極限まで低くする効果があり、海外の消費者需要に対応することが可能となります。
DGフィナンシャルテクノロジーの決済サービスについて詳しく知りたい方はこちら
Alipay、Alipay+決済の方法とは?
実際にAlipay、Alipay+を導入した場合、店舗の店頭やオンラインでどのようなプロセスで決済を行うのかを紹介します。
※店舗での決済は、Alipayを含む各国の決済ブランドが利用可能なAlipay+のみのご提供となります。
消費者提示型
消費者提示型とは、実店舗での決済方式の1つです。支払い方法としては、まず、利用者がスマートフォンアプリでQRコードを提示します。次に、店舗側がPOSや専用端末などの端末で利用者アプリに提示されたコードを読み取ることで決済が完了します。QRコードを読み取るだけなので、現金に比べると決済処理が早いことが挙げられます。
Alipay+の消費者提示型で必要になる店舗側の端末は、3つのタイプから選ぶことができます。すでに店舗に導入されているPOS端末のほか、専用アプリをインストールしたAlipay加盟店用の専用端末に加え、市販のiPadなどのタブレット端末に専用アプリをダウンロードして読み取ることもできます。
導入コストを考えると、既存のPOS端末はシステム改修が必要となるため他2つの方法と比べるとコストや開発工数が多くかかります。専用端末やタブレットを利用すれば、機器代金はかかりますが、簡単かつ低コストでAlipay決済が導入できます。

店舗提示型
店舗提示型の決済方法とは、店舗側がQRコードを掲示して、それを利用者が読み取ることで決済ができる仕組みです。

オンライン決済
ECサイトなどのオンライン決済でAlipay、Alipay+を使うには、利用者はECサイトでAlipayを選択した後、Alipayのアカウントにログインして決済を行います。Alipayを使う中国人利用者は人民元で支払いができる一方、日本の事業者へは日本円で支払われます。
具体的な支払いの流れは、まず、利用者が支払った代金が人民元でAlipayに入金されます。次に、Alipayから日本円で決済代行会社に売上金が支払われた後、売上金から手数料を差し引いた金額が決済代行会社から事業者へ日本円で支払われるのです。
※Alipayをご契約されている場合でもAlipay+の利用には別途ご契約が必要です。
Alipayその他のサービスとは?
Alipayには決済以外にもさまざまなサービスがあります。そのなかでも導入事業者にとってメリットのあるものとして「広告サービス」と「信用スコア化」についてここで紹介します。
O2O集客 ※Alipay中国のみ
「O2O」とは「Online to Offline」の略で、WEBサービスなどのオンラインをきっかけに、オフラインの実店舗へ集客することを指します。
従来のEC中心のビジネスは実店舗と競合関係にあり、店舗で購入するユーザーが低下する傾向にありました。 例えば、PCのモニターではわかりにくい実際の商品のクオリティーや色などを実店舗で確かめて、購入はEC経由という購買スタイルが一般化していたのです。
この状況を改善して、オンラインからオフラインの実店舗へユーザーを呼び戻す戦略がO2Oの考え方になります。競合関係ではなくお互いに利があるような「互恵的関係」を生み出します。
O2O広告機能では、利用者アプリ上で店舗のクーポンを発行したり、セール情報や利用者からの口コミをアップすることにより実店舗の集客を促進します。
Alipayのモバイルアプリでは、生活に役立つさまざまな店舗情報を検索することができます。
Alipay、Alipay+を導入する方法とは?
Alipay、Alipay+決済を導入するには、決済代行会社や金融機関などのAlipay認定の代理店に申し込みが必要です。なお、決済代行会社などの代理店によっては、Alipay、Alipay+以外にも訪日客に人気の決済手段を包括的に扱っている場合もあります。そのようなケースでは、複数の決済手段をまとめて契約・管理できるため管理の手間とコストを減らすことができます。
例えば、DGフィナンシャルテクノロジー(DGFT)の越境EC向け決済サービスでは海外消費者からニーズの高い、銀聯ネット決済、PayPal決済、多通貨クレジットカード決済など複数の国際決済を取り扱っています。このような決済代行会社を利用すれば、ワンストップで包括的に導入・運用することが可能です。
また、店舗でのAlipay導入ならその他複数のQRコード決済(PayPay、d払い、WeChat Pay、メルペイ )をまとめて導入できる、「Cloud Pay(クラウドペイ)や株式会社リクルートが提供する「Airペイ」がおすすめです。Cloud Payは、2024年に世界最大級の決済プラットフォーム「Square」のQRコード決済に採用され、ますます導入が加速しています。
マルチQRコード決済ソリューション「Cloud Pay(クラウドペイ)クラウドペイ」
Alipay、Alipay+の導入なら決済代行サービスを検討しよう
Alipay、Alipay+は訪日外国人旅行客向け実店舗販売や越境ECで非常に役立つ決済手段といえます。導入すれば、Alipay、Alipay+の36のEウォレットおよび決済パートナーを通じて、17億以上のユーザーに訴求できるため、小売ビジネスを行っている事業者であれば導入しない手はありません。
複数の人気国際決済を包括的に導入・運用できる越境EC向けの「VeriTrans4G」、店舗向けの「Cloud Pay(クラウドペイ)」がおすすめです。ぜひ、資料請求や問い合わせしてみましょう。
Alipay、Alipay+に関するよくある質問
アリペイは日本人でも使える?
2023年7月以降、Alipayは海外クレジットカードとの連携に対応し、日本人ユーザーでも利用可能になりました。一方で日本国内において日本人の利用は想定されていないため利用はできません。
AlipayとAlipay+はどう違いますか?
Alipayは中国国内のユーザー向けに提供されているモバイル決済アプリで、主に人民元を使った支払いに対応しています。一方でAlipay+は、Alipay(中国)を含む複数の海外Eウォレットや銀行アプリに一括で対応が可能です。 1つの決済プラットフォームで複数の地域の決済手段を導入できるというメリットがあります。